10月15日 暮らしの中の化学物質が心配? PRTR地域セミナーin徳島

開催案内

 

暮らしの中の化学物質が心配?-PRTR地域セミナーin徳島
日時
2011年10月15日(土) 午後1:00~4:10
場所
徳島市文化センター
    徳島市徳島町城内1番地   
内容
■基調講演  「PRTR法の持つ意味と利用の仕方」
          中地 重晴 氏  熊本学園大学教授
■パネルディスカッション
報告 
・「平成20年度PRTRデータの概要について
   -徳島県における化学物質の排出量・移動量の集計結果」
       徳島県環境管理課企画調査担当 岩佐博司さん
・大鵬薬品工業の環境保全活動について」
    大鵬薬品工業(株)工場総務部環境推進室 烏谷昌平さん
・「石けんプラントによる廃油石けん作りで有害化学物質(合成洗剤)の削減を
    「しゃぼんのWa」プラント責任者 小畠豊江さん
・Tウォッチの取り組み
    Tウオッチ理事長 中地重晴さん
ディスカッション
開催趣旨
 「アトピー」「シックハウス」や「化学物質過敏症」など聞いたことがありますか? いま,私たちの暮しの中には,さまざまな化学物質が使われています。工場やごみの焼却工場からも,さまざまな化学物質が排出されます。これらの化学物質の環境への排出をできるだけ減らすことは21世紀の大きな課題になっています。
 「PRTR(環境汚染物質排出・移動・登録)制度」は,事業者が取り扱う有害化学物質の大気,水,土など環境への排出量,及び廃棄物や下水道への移動量を,毎年届け出て,国が集計・公表することを定めた制度です。家庭,畑,自動車などからの排出などは国が推計して公表します。この制度を活用して地域の環境リスクを把握し評価できます。
資料代 500円
主催 「有害化学物質削減市民セミナーin徳島」実行委員会        
    NPO法人有害化学物質削減ネットワーク(Tウォッチ)

・090-7268-9448(藤永),090-7622-7831(堀) (市民アクション徳島)
・NPO
法人有害化学物質削減ネットワーク 

     TEL&FAX: 03-5836-4359 e-mail:comeon@toxwatch.net

この学習会は平成23年度地球環境基金の助成を受けています。

 


開催報告

PRTR地域セミナーin徳島 暮らしの中の化学物質が心配?

日時 2011年10月15日(土)13:00~16:10

場所 徳島県徳島市文化センター

主催

「有害化学物質削減市民セミナーin徳島」実行委員会         

NPO法人有害化学物質削減ネットワーク(Tウォッチ)

参加・協力組織

行政 徳島県環境管理課

企業 大鵬薬品工業㈱

市民 市民アクション徳島、「しゃぼんのWa」など

報告

 10 月15 日(土)、Tウォッチの地域セミナーが徳島市(会場:徳島市立文化センター)にて「有害化学物質削減市民セミナーin 徳島」実行委員会とTウォッチの共催で開催した。実行委員会は、北野静雄氏が呼びかけ人となり徳島小電力利用推進協議会や市民アクション徳島などの方々によりこのセミナーのために立ち上げられた。参加者は、講師を含め25 人であった。

 セミナーは、まず当ネットワーク中地理事長から基調演説「PRTR の制度の持つ意味と利用の仕方」がされた後、行政・企業・市民団体それぞれから発表があり、その後ディスカッションが行われた。以下に主な発表及びディスカッションの概要を述べる。

■行政の発表

徳島県環境管理課企画調査担当岩崎博司さん

 徳島県のPRTR 第1 種指定化学物質の届出外排出量も含めた総排出量は、2009 年度3,205tで、2001 年度の半分に減少している。このうち届出排出量は、2009 年度で514t(対2001 年度76%減)、届出対象業種で届出用件未満のものが375t(同80%減)と届出対象業種に関しては大幅に減少したのに対し、非対象業種が940t(同15%減)、家庭が689t(同23%減)、移動体が687t(同4%増)と、対象業種以外での減少が進んでおらず、移動体では逆に微増となっている。総排出量の上位5 位物質は、トルエン、AE、キシレン、クロロピクリン、D-D、LAS で、AE 及びLAS は合成洗剤で家庭から排出され、他の物質は主に届出外排出由来である。

 徳島県には製紙工場や木工工場があり、届出排出量(上位三位はトルエン、塩化メチレン、二硫化炭素)は主にここから排出され、移動量(上位三位は塩化メチレン、トルエン、クロム・三価クロム化合物)のほとんどは製薬や製塩の化学工業由来である。

 徳島県では、徳島県生活環境条例を設けており、化学物質適正管理指針の作成・公表をしているほか、排出量だけでは削減努力が評価できないとのことから2006 年度から取扱量も企業に報告させている(現在集計中)。また、化学物質削減のほか、災害時を想定すると事業者と住民との情報共有が事前に必要との観点から、2008 年度から化学物質リスクコミュニケーションを開催している。

■企業の発表

大鵬薬品工業㈱工場総務部環境推進室 烏谷昌平さん

 大鵬薬品工業㈱は、大塚グループに属し、チオビタなどの栄養ドリンクのほか抗悪性腫瘍剤などの医薬品を生産している。医薬品の生産高は全体の3/4 を占める。全国に4 カ所工場をもち、徳島は主力工場で、岡山ではチオビタシリーズの生産、埼玉では医薬品原薬生産、そして犬山では生薬原薬を生産している。

 取り扱っている主なPRTR 第1 種指定化学物質は、分析・実験作業で使用する溶媒(クロロホルム、アセトニトリル、ノルマルヘキサン)、風邪薬の原料であるアセトアミノフェン、ボイラー燃料としての灯油に含まれるキシレン、原薬製造時の溶媒であるジクロロメタンがあげられる。埼玉工場では、2007 年度に粒状活性炭に比べ吸着・脱着が十~数百倍早いK フィルターという活性炭繊維の溶媒回収装置を設置しジクロロメタンを回収(回収後、業者により再利用)するようにしたため、ジクロロメタンの排出濃度は360ppm から7ppm となり、有機溶媒の大気排出量は埼玉工場では88%減少、全社で2006 年度の1/3 となった。

 取扱量の削減では、徳島工場にて、空調で使用するエチレングリコールをプロピレングリコールに(2006・2007年度)、凍結乾燥器で使用するトリクロロエチレンをシリコンオイルに(2007 年度)変更し取扱量が減少したが、2010 年度にアセトニトリル及びノルマルヘキサンが第1 種指定化学物質に追加指定されたこともあり取扱総量(全社)は元に戻り、大気排出量も2006 年度の1/2 と後退した。

 今後、2015 年を目途に、ジクロロメタン、アセトニトリル、ノルマルヘキサンをそれぞれ非対象物質であるアセトン、メタノール、イソヘキサンに代替するほか、岡山工場の灯油ボイラーを天然ガスボイラーに変更しキシレンの排出をなくすことにより、第1 種指定化学物質の取扱量(全社)を2010 年度の25%に低減する計画である。

■市民団体の発表

「しゃぼんのWa」プラント責任者 小畠豊江さん

 カイワレ大根を発芽させる実験で、水及び台所用石けんが入った水ではカイワレが十分に育つのに対して、合成洗剤が入った水では根や芽が育たないのを見て驚き、このような合成洗剤が使用後に環境に流れていくのかと思い、その後家にある合成洗剤をなくしていくと同時に、仲間と共に石けん出前キャンペーンや石けん・合成洗剤の子供教室等を開催するようになった。合成洗剤にはPRTR 第1 指定化学物質が多く含まれており、家庭から排出されていることから、石けん運動をもっと取り組んでいく必要があると感じた。

 「しゃぼんのWa」は、当初「くらしを良くする会」でスタートし廃油による手作り石けんを作り始めた、その後生協に移り生協の石けん製造活動となったが、生協のプラントを使うようになってから自主規格に入る石けんが作れるようになり、その後、「しゃぼんのWa」を立ち上げてからは、地域の人々と石けん作りを行っている。

■ディスカッション

・大鵬薬品工業の化学物質使用等への対応烏谷氏からは、討論のなかでHP やCSR報告書等を通じて情報の積極的な公開、人の健康に貢献できる医薬品の提供、溶媒等の可能な限りの削減を推進していくとの発言があった。PRTR 非対象化学物質への代替化については、代替可能性や経済性の検討は行うとのことであったが、代替物質の安全性については明確な回答がなく、中地理事長からは毒性が同じでも使用量が少なければ非対象物質となるため、有害性について評価する必要があるとコメントがあった。また、排泄物中に含有する医薬品の影響についての質問があり、未解明な部分が多いが、日本製薬工業協会が調査や勉強会を行っているとのことであった。

・合成洗剤・殺虫剤の学校・給食施設での使用禁止に対する県の指導について岩佐氏から、この点は教育委員会や保健所の担当・指導のため県では指導はできないが、そういう指摘があったことは担当先に伝えたいとのことであった。会場から、ただ伝えるだけでなくPRTR に指定された物質が排出されているという説明もして欲しいという声があった。また、岩佐氏は、県から自主的に合成洗剤の規制をかける事はできず、世論の強い要望が不可欠であると述べた。

・その他

PRTR 指定物質が生活中のどのような製品に使用されているかとの関連で発表してもらいたかったという質問があったが、中地理事長からは、指定化学物質は工場で使用されるが、必ずしも製品に含まれるわけではないという認識をもってもらう必要がある、消費者製品についてはGHS 制度を適用することが必要だと見解を述べた。(T ウォッチ事務局)