3月28日 六価クロム基準3000倍 江戸川区排水溝の水から
2013年3月28日
朝日新聞2013年3月28日 六価クロム基準3000倍 江戸川区排水溝の水から
東京都江戸川区の都立大島小松川公園近くの排水溝の水が、環境基準の3千倍を超す濃度の六価クロムに汚染されていることが東京農工大の研究グループの調査で分かった。六価クロムは発がん性が指摘される有毒物質。周辺ではこれまでも漏出が相次いでおり、無害化処理されないまま地中に埋まっている可能性がある。原因究明を怠ってきた都の姿勢が問われそうだ。
排水溝は、江戸川区小松川1丁目の歩道下を通る。今年1~2月、東京農工大の渡辺泉准教授(環境毒性学)の研究グループが水を採取して調べた。最高で153ppmの六価クロムを検出した。環境基準1リットルあたりO・05ミリグラム(0・05ppm)の3千倍以上。
排水溝は格子状の金属のふたがしてあり、住民が直接触れるおそれはないが、口に入れば深刻な影響も懸念されるレベルという。
付近では、2011年2月に都職員が六価クロムを含む地下水の漏出を発見。都は道路の舗装をはがし、土壌120トンを除去して再舗装した。「漏出量はわずかで健康に影響はない」として住民に汚染の事実を公表せずに工事を進めた。汚染原因の調査も見送った。
この地区は1970年代、化学メーカーによる六価クロムを含む鉱滓(精錬後の鉱物くず)の大量投棄が発覚。都などは無害化処理したうえで鉄板などで仕切った地中に埋め戻し、さらに土で覆って公園とした。
研究グループの尾崎宏和特任助教は「採取した水の数値は鉱滓そのものに匹敵するレベル。すべて無害化できず何十年も地下を汚染している可能性がある」として、原因や汚染状況の調査など都の早急な対応を訴える。都環境局の成沢智司・土壌地下水汚染対策担当課長は「排水溝の水の汚染、水にはまったく気がついていなかった。3千倍という濃度が事実なら深刻な問題であり、早急に対応を取りたい」と話す。(森治文)
都は原因究明を 土壌汚染問題にくわしい畑明郎・日本環境学会前会長の話
六価クロムが未処理のままなら、地下水を通じて土壌を次々と汚染している可能性が高く、造成工事で砂ぼこりを吸い込むなど健康への影響も懸念される。都は放置せず、根本的な原因を究明すべきだ。