阪神大震災復旧作業中に石綿 中皮腫で労災認定

2012年8月24日

朝日新聞2012年8月24日 阪神大震災復旧作業中に石綿 中皮腫で労災認定

1995年1月に発生した阪神大震災で、がれき撤去などの復旧作業に携わった経験がある兵庫県宝塚市の男性(享年65)が、アスベスト(石綿)の吸引が原因とみられる中皮腫を発症して死亡し、労災認定を受けていたことがわかった。遺族や関係者は「東日本大震災でも起きる可能性がある」として、対策の必要性を指摘している。

遺族ら「東日本でも起きる」

遺族らによると、男性は阪神大震災で自営の衣料品販売の仕事ができなくなり、発生直後の95年2月ごろから約2ヵ月間、被災地の兵庫県宝塚市や西宮市、神戸市などでがれき撤去などのアルバイトをした。被災して破損した建物の屋根瓦や廃材の片付け、清掃作業をしていたという。男性は2010年10月ごろからせきや微熱が出るようになり、昨年1月に悪性胸膜中皮腫と診断され、同年10月に死亡した。

男性は震災時のほかには石綿を吸い込むような環境にはいなかったとして、昨年6月に西宮労働基準監督署に労災申請し、今年8月に認定された。24日午前に会見した男性の妻(67)は「たった2ヵ月のアルバイトで中皮腫になった。東日本大震災の被災地で復興に携わっている人たちにもマスクをするなどして、気をつけてもらいたい」と話した。

震災による石綿被害では、阪神大震災直後から神戸市内などで1年以上、建物解体作業に従事し、中皮腫を発症した兵庫県内の30代男性が、08年に姫賂労基署から労災認定を受けている。また、2ヵ月間の解体作業の現揚監督経験があり、中皮腫を発症した元建設会杜員の男性も、09年に西宮労基署から労災認定された。今月16日には、震災がれきの回収・運搬に携わり、中皮腫を発症した兵庫県明石市の40代の男性職員が公務員の労災にあたる「公務災害認定」を地方公務員災害補償基金に申請している。