環境省:「越境大気汚染・酸性雨長期モニタリング報告書(平成20~24年度)」の公表について(お知らせ)
2014年3月27日
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=17946
平成26年3月27日
「越境大気汚染・酸性雨長期モニタリング報告書(平成20~24年度)」の公表について(お知らせ)
環境省では、昭和58年度に第1次酸性雨対策調査を開始し、東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)が本格稼働した平成13年度からは、広域的かつ長期的な酸性雨モニタリングを継続的に実施していくため、「酸性雨長期モニタリング」を実施してきた。その後、平成21年度からは、平成15~19年度のモニタリング結果を踏まえ、集水域調査の追加、湿性沈着モニタリング地点の見直し等を行うとともに、越境大気汚染問題への関心の高まりを受け、酸性沈着のみならず、オゾンやエアロゾルも対象に越境大気汚染を監視する「越境大気汚染・酸性雨長期モニタリング」として、長期継続的なモニタリングを実施してきた。 本報告書は、国内や東アジア地域における越境大気汚染や酸性沈着の長期トレンド、その影響の早期把握、オゾン等大気汚染物質の長距離越境輸送の解明そのための調査・研究、及び東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)への我が国の貢献等に資するため、平成20年度から平成24年度までの越境大気汚染・酸性雨長期モニタリング結果(湿性沈着(降水)、大気汚染物質(ガス、エアロゾル)、土壌・植生、陸水及び集水域モニタリング結果)を取りまとめたものである。
記
1.「越境大気汚染・酸性雨長期モニタリング報告書(平成20~24年度)」の概要
別紙のとおり。
(1)モニタリング結果のポイント
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- 降水は引き続き酸性化した状態にある。
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- 降水中に含まれる非海塩性硫酸イオン等の濃度は冬季と春季に高く、国内の酸性沈着における大陸からの影響が示唆される。
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- 大気汚染物質(ガス、エアロゾル)の季節変動の傾向は、物質によって異なる。
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- 二酸化硫黄及び粒子状非海塩性硫酸イオンは、大陸に近い地点ほど濃度が高く、大陸からの移流の寄与が大きいことが示唆された。また、特定の気象条件や黄砂の飛来現象に伴い、イオン成分等の上昇も確認された。
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- 一部の地点で、土壌pHの低下、湖沼や河川のpHの低下等、大気沈着との関連性が示唆される経年変化を確認した。また、樹勢の変化等が見られた地点(樹木)もあったが、これらの地点の中には、自然的要因による影響が考えられるものもあった。樹木の成長量の観点から見た森林全体の衰退は、確認されていない。
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- 土壌の酸性化や窒素飽和の状態が進んでいることが指摘されている伊自良湖集水域では、回復の兆候も一時は見られたもののいまだ明確ではない。
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- 酸性化リスクに対する土壌及び陸水の要監視地域を抽出した。
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- 過去10年間でオゾン濃度は3地点で減少傾向を、1地点で増加傾向を示した。
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- 過去10年間でPM10濃度は5地点で減少傾向を示したが、増加傾向を示した地点は無かった。PM2.5濃度については、有意な傾向はみられなかった。
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- 代表的な樹種について、オゾンによる植物影響の要監視地域を抽出した。
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- オゾン植物影響に関するパイロット・モニタリングの実施地点では、オゾン濃度が高く、樹木の枯死や衰退が報告されている地域もあり、既に樹木の成長が抑制されている可能性もある。
(2)今後の主な課題
[1] 国内における取組の推進
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- モニタリングに比重を置くべき項目も変化しており、このことにも対応しつつ総合的、長期継続的なモニタリングを実施していく必要がある。このため、PM2.5モニタリングの強化等、随時モニタリングの内容について見直しを図っていくことが必要である。
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- 酸性沈着やオゾン等による越境大気汚染の状況を総合的かつ正確に解析評価するためには、シミュレーションモデルの開発、精緻化が不可欠である。特にPM2.5については、現時点では必ずしも十分な精度を有するモデルが開発されているとは言えない状況であり、さらに調査研究を進める必要がある。
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- 酸性化のリスクが高い可能性がある地域(酸性化リスクの要監視地域)を優先して生態影響メカニズムの解明を進めていくことが求められ、大気沈着の影響を含めた総合的な解析を継続していく必要がある。安定同位体比分析は、大気沈着と陸水の酸性化・窒素飽和との関連性の解明に資することから、このような手法を活用した調査研究を推進することが望まれる。
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- オゾンの植物影響に関するパイロット・モニタリングを継続し、オゾンの植物影響を評価するための手法の確立とともに、吸収フラックス(実際に葉の気孔を通じて吸収されるオゾンの量)を用いた評価や、大気汚染とそれ以外の要因(病虫害等)による複合影響の実態に関する情報収集に努める必要がある。さらに、粒子状物質とオゾンの複合影響を解明するための取組も必要である。
[2] 国際的な取組の推進
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- これまで東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)においては、オゾンや粒子状物質のモニタリングが必ずしも十分に行われていないことから、EANET参加国への働きかけによりモニタリングを充実させていく必要がある。
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- アジア各国が清浄な大気を共有できるよう、地域協力の強化に取り組むことが必要であり、その際、この分野における活動に顕著な実績のある既存の国際的な組織、ネットワーク、プログラム等との連携により、各種の活動を検討、展開していくことも必要である。
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- アジアにおける広域(越境)大気汚染問題を国際的に解決するに当たり、まず、アジアの科学者間で科学的な事実に対する認識を共有し、それに基づく適切な解決策を政策決定者等に提供する仕組みが有効に機能することが期待される。そのための方策として、科学者が議論し政策決定者に発信するための枠組みの構築等について検討する必要がある。
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- 「越境大気汚染・酸性雨長期モニタリング報告書(平成20~24年度)」は、以下を御参照ください。 http://www.env.go.jp/air/acidrain/monitoring/rep3.html
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- 「越境大気汚染・酸性雨長期モニタリング計画」は、以下を御参照ください。 http://www.env.go.jp/air/acidrain/monitoring/project_1403.pdf
添付資料
連絡先
環境省水・大気環境局大気環境課 直通:03-5521-9021 代表:03-3581-3351 課長 :難波 吉雄 (6530) 課長補佐:後藤 隆久 (6556)