10月1日:受動喫煙 肺がんリスク論争 JT「関係 結論は困難」 国がん「害軽く考えている」

2016年10月1日

朝日新聞2016101
受動喫煙 肺がんリスク論争 JT「関係 結論は困難」 国がん「害軽く考えている」

 

受動喫煙による日本人の肺がんリスクを「確実」とする評価を疑問視するコメントを出した日本たばこ産業(JT)に対し、国立がん研究センターが「リスクは科学的に明確な結論」と反論する見解をウェブサイトに掲載した。国の研究機関が企業のコメントに公式に反論するのは異例だ。

発端はがんセンターの831日の発表。国内の9本の研究論文を統合解析し、非喫煙者の受動喫煙による肺がんリスクはない人に比べて13倍となり、リスクは「確実」として屋内全面禁煙の義務化を訴えた。日本人の受動喫煙によるがんリスクを科学的に初めて証明したとされた。

JTは同じ日に、「本研究結果だけで、受動喫煙と肺がんの関係が確実になったと結論づけることは困難」と小泉光臣杜長名でコメントをすぐに発表。「9研究は時期や条件も異なり、いずれも統計学的に有意でない結果を統合した」などとした。

これに対しがんセンターは928日、「(JT)受動喫煙の害を軽く考える結論に至っている」とする見解を掲載。解析手法について「個々の研究では対象者の偏りや不足、調整されていない要因などの影響で結果が不安定になるが、複数の研究の統合でより確かな緒果が得られる」と説明した。

反論に対し、JT広報は「見解の相違で、私たちの意見は変わることはない」と現段階で再反論の予定はないという。岡村智教慶応大教授(公衆衛生学)は「今回のがんセンターの研究成果はかなりフェアな解析。受動喫煙の肺がんリスクは世界中で同じ傾向の結果が出ていて、今回でさらに普遍性、説得性を高めたと思う」と話している。(熊井洋美)