3月16日:水田の農薬、トンボに悪影響 国立環境研実験

2016年3月16日

朝日新聞20163162034
水田の農薬、トンボに悪影響 国立環境研実験
http://www.asahi.com/articles/ASJ3H7G1DJ3HUJHB012.html

 

 稲作で使われる農薬の中に、トンボの生息に悪影響を及ぼすものがあることを国立環境研究所(茨城県つくば市)のチームが実験で確かめた。屋外の実験用水田で無農薬栽培と比べるとトンボの幼虫(ヤゴ)の個体数が数分の1以下になったという。16日付の英科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表した。

 稲作では、作物の根から吸い上げられ、食害した虫を殺す「浸透移行性殺虫剤」という農薬が広く使われている。毒性は低いとされているが、トンボなどの減少傾向との関係が指摘されるネオニコチノイド系の農薬も含まれる。

 チームは2013年4月から10月まで、4メートル×2メートル程度の八つの実験用水田を使い、ネオニコチノイド系など浸透移行性農薬3種類を使った場合と無農薬栽培とで生物の種類の変化などを比べた。その結果、無農薬の2カ所では日本全国で普通に見られるシオカラトンボの幼虫が26匹と18匹見つかったのに対し、農薬を使った6カ所では0~19匹。特にフェニルピラゾール系の農薬を使った2カ所は、2匹と0匹だった。ショウジョウトンボも、この農薬を使った水田では他の2~3割程度にとどまり、羽化後の殻もほとんど見つからなかった。

 同研究所の五箇公一主席研究員は「殺虫成分の水中濃度は分解して急速に減少したが、土壌中には長く残っていた。水底にすむヤゴが影響を受けた可能性がある」と指摘する。現在、農薬の環境への影響を評価するに当たっては、研究室の中で、限られた生物種を対象に毒性試験が実施されており、五箇さんは「屋外実験も活用したリスク評価が必要だ」と話している。(吉田晋)