2005年度分PRTR公表データについて

Tウォッチ理事長 中地重晴

本年2月23日に第5回PRTR集計公表データが発表されました。今回発表されたのは、2005年度(平成17年度)分ですが、電子媒体での届出が一定定着したことや、事務手続きも円滑にいくようになり、2月末に公表されることも定着してきたようです。

表1に届出排出量・移動量の5年分の集計値を年度ごとに並べてみました。05年度は04年度と比較して、総排出量は1万1千トン減少しました。その内、大気への排出が8千トンです。約4%の減少です。事業者の自主的な取組みによって、環境中への排出量が削減されたことは評価できます。大気への排出量は着実に減少しているように表からは読み取れます。

一方、総移動量は逆に千トン増加しています。廃棄物への移動量が千トン増加しているわけですが、循環型社会形成を目指し、廃棄物の減量化やリサイクルなどの再生利用が推し進められており、廃棄物への移動量が減少してもよいはずですが、PRTR対象物質に関しては、そううまくいってないことが分かります。下水道への移動は1割減少しました。事業者の削減努力によるものかどうか、調査できればよいのですが、現行の届出制度では、削減したり、増加した理由を記入する欄がないので、生産量などが減って自然に削減したのか、事業者が工程を工夫したり、新たな除去、回収などの装置を設置した成果なのか評価できません。市民が事業者の努力を評価できるような仕組みが必要だと思います。

表1 届出排出・移動量の経年変化(単位:千トン)
2005年 2004年 2003年 2002年 2001年
総排出 259 270 291 290 314
大気 225 233 250 256 280
公共水域 11 11 13 12 13
場内土壌 0.23 0.26 0.25 0.30 0.30
場内埋立 22 25 27 22 20
総移動 231 230 240 217 223
廃棄物 228 227 236 214 219
下水道 2.7 3.0 3.1 3.0 4.0

次に、表2に届出外排出量の推計値を年度ごとに並べてみました。全体で、前年度より9千トン減少していますが、前々年度よりは6千トン増加しており、横ばいという感じがします。05年度の特徴は、家庭からの排出量が5千トン減少したことです。約8%の減少ですが、家庭からの排出量は今まで大きな変化がなく、今年初めて、大幅な減少となりました。市民が身の回りの有害物の存在に気がつき、使用量を減らしたからということであれば評価できます。

実際、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩(LAS)が約4千トン減少したためのようです。LASは陰イオン界面活性剤の主成分で、代表的な合成洗剤の成分ですが、05年度は出荷量が大幅に減少し、排出量も大幅に減少しました。図に示すとおり、届出排出量と届出外排出量の合計の上位10物質でいうと04年度までは5位でしたが、05年度は9位と大幅に順位を落としたことが、05年度集計公表データの中で、一番印象的な特徴です。界面活性剤はPRTR対象物質が6種類ありますが、他の物質の排出量には、変化がありませんから、対象物質外に代替されたと考えられますが、石鹸洗剤工業会に問い合わせるなどして、LASの減少の理由を確かめる必要があります。また、この間少しずつですが、非対象業種の排出量が増加しており、何が理由かを調べる必要があります。排出量上位10物質に農薬D-Dが10位に初めて登場したのも大きな特徴で、制度が開始され、大量に排出されたものの中に、使用量や排出量が大きく減少しているものがあることが分かります。

今後は、05年度の集計公表データについて、詳細に検討し、これからの化管法、制度の見直しに活用していく必要があります。

表2 届出外排出量の経年変化(単位:千トン)
2005年 2004年 2003年 2002年 2001年
合計 348 357 342 589 585
対象業種 59 62 55 251 322
非対象業種 111 107 105 126 105
家庭 55 60 63 62 69
移動体 124 128 119 154 88

(2007年3月)