東京近郊で発生の大気汚染物質は微小粒子化して北関東で高濃度に – 環境研
2012年10月23日
マイナビニュース2012年10月23日17:00 東京近郊で発生の大気汚染物質は微小粒子化して北関東で高濃度に – 環境研
http://news.goo.ne.jp/article/mycom/life/mycom_709405.html
国立環境研究所(環境研)は10月23日、複数の研究機関と共同で2007年夏季に北関東で実施した大気の集中観測のデータと、微小粒子の成分データと放射性炭素(14C)同位体比の測定結果に基づく統計解析および3次元化学輸送モデルによるシミュレーションによって、東京近郊で発生した化石燃料起源のガス状・粒子状の物質が風で輸送されると共に光化学反応を受けた結果、北関東において都心部以上にしばしば微小粒子が高濃度になることが明らかになったと発表した。
成果は、環境研 地域環境研究センターの大原利眞センター長、同・森野悠研究員、同・小林伸治客員研究員、同・高見昭憲室長、同・環境計測研究センターの田邊潔上級主席研究員、内田昌男主任研究員、伏見暁洋研究員らの研究グループによるもの。詳細な内容は3報の論文として、「大気環境学会誌」などに掲載された。
大気中の微小粒子はヒトの健康に悪影響を及ぼすと考えられており、日本では2009年9月にPM2.5(粒径2.5μm以下の微粒子)に対する環境基準が定められている。ところが、PM2.5濃度は基準を超過しているところが多く、その実態把握が急がれているのが現状だ。
PM2.5はさまざまな起源を持つ複雑な混合物であり、燃焼で生成する一次粒子のほか、ガス状成分から大気中での反応で生成される二次生成粒子が大きな割合を占める。しかし二次生成粒子の起源や生成メカニズムは特に有機物に関して複雑で、未だに解明されていない。
そこで国立環境研究所は複数の研究機関と共同で、2007年夏季に北関東において微小粒子の集中観測と起源解析、数値シミュレーションを実施した。観測では、粒子中の主要成分のほか、炭素成分の起源(化石燃料、生物)を把握するため、放射性炭素(質量14の炭素の放射性の同位体)が測定された。
自然界に存在する炭素は質量数12のもの(12C)がほとんどだが、14Cも大気中や生物中に微量ながら一定の比率で存在する。一方、放射性炭素は半減期5730年で減衰するため、化石燃料中の量はゼロとみなせる。そこで、加速器質量分析計で大気粒子中の12Cと14Cの比率を測定することで、化石燃料起源と生物起源の比率を推定することが可能になるというわけだ。
また炭素成分に注目し、大気粒子の化学組成と各種発生源の化学組成の類似度を比較することで、各種発生源の寄与率を推定する統計手法「ケミカルマスバランス(CMB)法」による起源解析も実施された。
(中略)
これら結果から、北関東における夏季の微小粒子に対して二次生成が大きく寄与していることが確認された。北関東において粒子状物質が日中に高濃度になったのは、東京近郊で排出された粒子が輸送されてくることに加え、ガス状成分が輸送中に粒子化したためと考えられるという。そのため、大気中の微小粒子濃度を低減させるためには、個別の地域での取り組みだけではなく、周辺地域と連携して対策を講じていくことが重要になってくると、研究グループは述べている。
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