4月16日:熊本地震、相次ぐ操業停止 部品供給、寸断のおそれ

2016年4月16日

朝日新聞20164160500
熊本地震、相次ぐ操業停止 部品供給、寸断のおそれhttp://www.asahi.com/articles/DA3S12312723.html

 

 最大震度7を記録した熊本地震は、企業の生産拠点にも被害をもたらした。熊本県に拠点を置く企業は15日、被害の確認や復旧作業に追われた。自動車や家電製品などの部品がつくれなくなり、サプライチェーン(部品供給網)が寸断して、企業の生産活動が滞るおそれも出てきた。

  ■自動車 震源から離れた工場も

  震源地から離れた福岡県にあるトヨタ自動車九州の3工場が15日、操業を停止した。エンジン部品などをつくるトヨタ系の自動車部品メーカー、アイシン九州(熊本市)の工場が、地震の影響で設備の一部がずれるなどしたため操業を停止し、部品供給できなくなったことが影響した。

  高級車レクサスの組み立てを担う宮田工場(福岡県宮若市)は終日、稼働を停止。エンジンなどをつくる苅田工場(同県苅田町)と小倉工場(北九州市)も、15日午前に一時稼働したものの、再び停止した。操業再開のめどは立っておらず、16日も3工場とも操業を見合わせる。

  アイシンの工場停止の影響は、トヨタ系以外の自動車メーカーにも広がる。三菱自動車の水島製作所(岡山県倉敷市)も15日、軽自動車などの生産を18日に減らし、19日に停止することを決めた。

 日産自動車の子会社、日産自動車九州(苅田町)も16日の操業停止を決定。こちらも熊本地震の影響で部品メーカーからの供給が滞ることが理由だ。週明け18日に操業を再開するかどうか、17日に判断するという。

 半導体大手ルネサスエレクトロニクス子会社の川尻工場(熊本市)。白い建物がいくつも並ぶ敷地の中はひっそりとしていた。

  マイコンと呼ばれる自動車用半導体などをつくるこの工場も、地震発生後に操業をすべて停止。工場内には危険な薬液やガスなどが多くあるため、余震がつづく中、設備の点検作業に時間がかかっているという。

  2011年の東日本大震災では、自動車用半導体をつくる同社の茨城県の工場が被災。世界シェア4割の同社からの調達に頼っていた自動車各社が、生産停止に追い込まれたことは記憶に新しい。トヨタは国内の全工場が停止し、全面再開まで1カ月以上かかった。

  ルネサスの目視点検では工場の建屋に目立った被害はなく、天井が崩れた5年前と状況は異なるという。ただ、半導体製造に必要なクリーンルームの造り直しが必要になれば、「生産再開まで1カ月かかるケースもある」(広報)という。

 

■半導体・飲料… 影響、多くの業界に

  サプライチェーンへの影響が心配されるのは、自動車業界だけではない。

 スマートフォンのカメラ向け画像センサーなどを製造するソニーの半導体子会社、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングの生産拠点、熊本テクノロジーセンター(菊陽町)は15日現在、製造ラインを再開するめどが立っていない。

  同社は自社のスマホ向けだけでなく、他社にも画像センサーを供給している。例えば、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)が昨年6月に日本で売り出したスマホは、高感度のソニー製センサーを二つ搭載していることを売りにしていた。生産停止が長引けば、こうした取引先の不安も高まりそうだ。

  消費者に身近な飲料品をつくる工場にも影響が広がった。サントリーの九州熊本工場(嘉島町)ではビール類、水、コーヒー、お茶などの生産がストップ。15日時点で再開のめどは立っておらず、卸売業者などへの出荷の停止や遅延が起きているという。

 15日中に設備の確認を進め、通常操業に戻るめどが立った工場もある。

  ホンダの国内唯一の二輪車の生産拠点である熊本製作所(大津町)は余震が続く中、設備の点検作業に手間取ったものの、週明けから稼働できるかどうか、17日に判断できそうだ。

  船外機をつくるヤマハ発動機の子会社、ヤマハ熊本プロダクツの工場(八代市)は、一部の設備が損傷したが、15日午後までに通常操業に戻った。新聞用紙やコピー紙をつくる日本製紙の工場(八代市)も15日夕までにほぼ復旧した。