3月15日 胆管がん原因2物質と推定 労災認定吸引量カギ

2013年3月15日

朝日新聞2013年3月15日 胆管がん原因2物質と推定 労災認定吸引量カギ

(前略)

 進まぬ危険情報集約

厚労省は「1,2ジクロロプロパン」の規制を強化する。しかし、有機溶剤の販売業者は「規制のあるジクロロメタンの代用品として1,2ジクロロプロパンが広がった。客は法規制のある物は欲しがらない」という。被害と規制のいたちごっこを避ける抜本策が必要だ。熊本学園大の中地重晴教授(環境化学)は「化学物質の有害性を一元的にチェックするため、総合的な法律を作るべきだ」と語す。

厚労省の中にも「犠性者が出てから行政が動く仕組みでは、第二の胆管がんが出かねない」という声がある。昨年4月には関係する厚労、経済産業、環境の3省が「今後の化学物質管理政策に関する合同検討会」を発足させた。参考にしたのは欧州連合(EU)が2007年に導入した化学物質管理規則「REACH」。EU内では年間1トン以上の化学物質を製造、輸入する企業は必ず安全性を評価し、その情報を登録しなければならない。情報は一元的に管理されている。

しかし、9月にまとめられた中間報告は当初の目標から後退。「体系的・一元的な危険有害性情報の収集」「サプライチェ

ーン全般にわたる化学物質の危険有害性情報などの伝達・提供」を検討課題とするにとどまった。その後、検討会は開かれていない。

今回の問題は、医療体制にも課題を残した。

「改めて過去のカルテを見返すと、該当する胆管がん患者がいた」。問題を受けて専門外来を設置した大阪市立大病院の久保正二医師は、診断時に気づけなかったことを悔やむ。

カルテには問診で得た簡単な職歴は記入されるが、どんな環境で働いていたかまでは把握する仕組みがない。職場が原因だと疑うのは難しかったのが実情だ。

発症していなくても、将来のリスクを抱える人の健康診断をどうするのかといった点も未解決だ。圓藤吟史・大阪市立大教授は「がんを阜期にみつけて治療につなげる体制づくりも急ぐ必要がある」と話す。