環境省:被災地の海洋環境の第3次モニタリング調査結果の公表について(お知らせ)

2012年4月13日

■環境省は「被災地の海洋環境の第3次モニタリング調査結果の公表について(お知らせ)
」を公表しました。 詳しくはこちらをご覧ください。

 

平成24年4月13日

被災地の海洋環境の第3次モニタリング調査結果の公表について(お知らせ)

 環境省では、東日本大震災を受け、被災地の海洋環境について有害物質等のモニタリング調査(第3次)を実施しました(調査実施日:12月6日~26日)。海洋環境緊急モニタリング調査検討会での検討結果を踏まえ、以下のとおり公表します。
なお、環境省では、今後も継続して監視を実施することとします。

1. 調査結果概要

環境省では、東日本大震災を受け、被災地25測点(調査測点については、地図別添参照)の海洋環境について有害物質等のモニタリング調査(第3次)を実施しました。八戸-1~3、山田-1、大槌-1、釜石-1、気仙沼-1’、南三陸-2’、仙台-1’においては今回初めて調査を行いました。

ア) 環境基準調査
(1) 生活環境の保全に関する環境基準(生活環境項目)
環境基準値と比較して問題となる値はありませんでした。
(2) 人の健康の保護に関する環境基準(健康項目)
すべての項目について環境基準値を下回っていました。
ポリ塩化ビフェニル(PCB)について
 海水中のPCBは全体として第1次及び第2次調査結果よりも低い値であり、いずれの測点においても環境基準値(公定法により検出されないこと=0.0005mg/L未満)を下回っていました。一方、堆積物中のPCBは、今回初めて調査を行った測点の中で、他よりも相対的に高い値が検出された測点がありましたが、全体としては第2次調査結果と同様の値であり、いずれの測点においても暫定除去基準値を下回っていました。
ダイオキシン類について
 海水中のダイオキシン類について、表層では全体としては第1次及び第2次調査結果と同様の値であり、底層では第1次及び第2次調査結果よりも低い値でした。堆積物中のダイオキシン類は、今回初めて調査を行った測点も含め、第1次及び第2次調査結果の範囲内でした。海水中及び堆積物中とも、いずれの測点においても環境基準値を下回っていました。
イ) 有害物質等調査
(1) 油分(炭化水素)
海水中の炭化水素は全体としては第1次及び第2次調査結果よりも低い値でした。
(2) 臭素系難燃剤(PBDE及びHBCD)
 海水中のPBDEは、第1次及び第2次調査結果の範囲内でした。堆積物中のPBDEは、いずれの測点においても第1次及び第2次調査結果と同様の値でした。  海水中のHBCDはいずれの測点においても検出されませんでした。堆積物中のHBCDは、今回初めて調査を行った測点の中で、他よりも相対的に高い値が検出された測点がありましたが、おおむね第2次調査結果の範囲内でした。
(3) 有機フッ素化合物(PFOS及びPFOA)
 海水(表層)中のPFOS及びPFOAは、第1次及び第2次調査結果よりも低い値でした。一方、海水(底層)中及び堆積物中のPFOS及びPFOAは、全体としては第1次及び第2次調査結果と同様の値でした。
ウ) 海底ごみ調査
 離岸1km以遠の海域においてサイドスキャンソナー調査(注)を実施した結果、海底に沈積しているごみが第1次調査と同様に検知されました。三陸海域では沿岸に近い海域にやや多く分布する傾向が見られ、今回初めて観測を行った海域においては「やや多い」と区分された場所はありませんでした。仙台湾では相対的に北部において多く分布し、南部において少なく分布する傾向が見られました。いずれの海域においても、第1次調査における分布状況と比較して、顕著に増加している傾向は見られませんでした。
サイドスキャンソナーでごみが検知された地点のうち、12地点において水中カメラによる撮影を行ったところ、第1次調査では発見されなかった種類のごみとして、車両の一部と推定されるごみ(陸前高田-2付近及び気仙沼-1付近)や工場の鉄板屋根の一部と推定されるごみ(気仙沼-1付近)が発見されました。
注:
サイドスキャンソナー調査とは、海底に向けて音響パルスを発信し、その反射・散乱波を受信することにより、海底の地形や沈積物の状況を把握するものです。相対的な分布状況を「やや多い」「やや少ない」「ほとんど無い」の3区分で表しています。
エ) 放射性物質調査
 海水中の濃度については、セシウム134では表層が不検出(<0.00086 Bq/L)~0.045 Bq/L、底層が不検出(<0.00086 Bq/L)~0.039 Bq/Lの範囲、セシウム137では表層が0.0017~0.056 Bq/L、底層が0.0017~0.051 Bq/Lの範囲でした。また、海底土中の濃度については、セシウム134では不検出(<0.67 Bq/kg(dry))~770 Bq/kg(dry)の範囲、セシウム137では不検出(<0.83 Bq/kg(dry))~970 Bq/kg(dry)の範囲、ストロンチウム90では不検出(<0.12 Bq/kg(dry))~0.22 Bq/kg(dry)の範囲でした。

2.まとめ

 化学物質調査では、環境基準が設定されている項目(参考資料参照)はいずれも問題となる値は検出されませんでした。それ以外の項目については、全体としては第1次及び第2次調査と同様あるいは低い値でした。  海底ごみ調査では、いずれの海域においても、第1次調査における分布状況と比較して、顕著に増加している傾向は見られませんでした。今回初めて車両あるいは建築物の一部と推定されるごみが発見されましたが、調査対象とした離岸1~20kmの海域においては全体的なごみの密度は比較的小さく、至るところに大型のごみがある状態ではないことが改めて確認されました。

3.海洋環境緊急モニタリング調査検討会検討員

(50音順、敬称略)
石坂丞二 名古屋大学地球水循環研究センター教授
井上均見 海上保安庁海洋情報部環境調査課海洋汚染調査室長
小城春雄 北海道大学水産学部名誉教授
白山義久 独立行政法人海洋研究開発機構理事
田中  勝 鳥取環境大学サステイナビリティ研究所長・特任教授
田辺信介 愛媛大学沿岸環境科学研究センター教授
中田英昭 長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科長(座長)
西田周平 東京大学大気海洋研究所教授
野尻幸宏 独立行政法人国立環境研究所地球環境研究センター上級主席研究員
牧  秀明 独立行政法人国立環境研究所地域環境研究センター海洋環境研究室 主任研究員

*詳細な資料等については、環境省のHPにおいて公表予定  環境省URL:http://www.env.go.jp/water/kaiyo/monitoring.html