環境省:第4回国際化学物質管理会議(ICCM4)の結果について(お知らせ)

2015年10月5日

http://www.env.go.jp/press/101507.html

平成27年10月5日

保健対策

第4回国際化学物質管理会議(ICCM4)の結果について(お知らせ)

 2006年2月に開催された第1回国際化学物質管理会議(ICCM1)において策定された「国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ」(SAICM(サイカム))の推進のため、9月28日~10月2日にジュネーブ(スイス)において第4回国際化学物質管理会議(ICCM4)が開催されました。
今回の会合では、持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)で採択された2020年目標の達成に向け、全体方針及び指針(OOG)が承認されるとともに、持続可能な開発目標(SDGs)を含む2020年以降の化学物質管理に向けた議論等を行いました。
また、我が国より、2015年9月にSAICM関係省庁連絡会議において取りまとめたSAICM国内実施計画の進捗状況の点検結果について報告を行うとともに、日本ブースを設置し、日本の化学物質対策に関する取組について情報発信を行いました。
さらに、サイドイベントにおいて、我が国がリード国として取組を主導してきた国連環境計画(UNEP)水銀パートナーシップ廃棄物分野において策定された「水銀廃棄物の貯蔵と廃棄の実務のためのソースブック」の出版イベントをUNEPと共同で開催しました。

1.背景

2006年2月に開催された第1回国際化学物質管理会議(International Conference on Chemicals Management:ICCM1)において、「国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ」(Strategic Approach to International Chemicals Management:SAICM)が策定されました。

国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)は、2002年の持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)で採択された「2020年までに化学物質が人の健康・環境に与える著しい悪影響を最小化するような方法で生産・使用されるようにする」との目標(WSSD2020年目標)に向けて、予防的なアプローチの考え方に沿った、科学的なリスク評価に基づくリスク削減、化学物質に関する情報の収集と提供、各国における化学物質管理体制の整備、途上国に対する技術協力の推進等の分野での戦略と行動計画として2006年に定められたものです。この計画のフォローアップのため、定期的にSAICM事務局が国際化学物質管理会議(ICCM)を開催することとされています。

2.会合の概要

・開催期間: 2015年9月28日(月)〜10月2日(金)

・開催場所:ジュネーブ(スイス)

・出席者:各国政府代表(103カ国・地域及び29のオブザーバー国)、関係国際機関、産業界、非政府機関等約800名が参加。日本政府からは環境省(立川 裕隆 環境安全課長ほか)、外務省、経済産業省の担当官が出席

※会議文書:議題、会議文書等は以下のウェブサイトから入手可能です。
http://www.saicm.org/index.php?option=com_content&view=article&id=525&Itemid=700

3.会合の主な結果

(1)化学物質の適正管理に関する2020年目標の達成に向けた進捗と課題

SAICMの実施における進捗と課題に関連として、

①包括的方針戦略(Overarching Policy Strategy:OPS) と関連した地域の活動実績、及び課題

②クイックスタートプログラム(Quick Start Programme:QSP)の報告

③持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)に関連した化学物質及び廃棄物の適正管理

の3項目について議論されました。各項目の主な結果は以下のとおりです。

1)包括的方針戦略(OPS)と関連した地域の活動実績及び課題:

SAICM の対象範囲や目的等を定めた包括的方針戦略(OPS)について、2011-2013年(第2次期間)の進捗報告がなされました。

関連して、我が国からは、2015年9月にSAICM関係省庁連絡会議においてSAICM国内実施計画の進捗状況の点検を行い、報告書としてとりまとめたことを報告しました。

2)クイックスタートプログラム(QSP)の報告:

途上国におけるSAICM の実施を支援するために比較的少額の資金援助を行う「クイックスタートプログラム(QSP)」に関しては、今次会合までで新規の資金提供を停止し、今後は、引き続き残存資金によるプロジェクトの実施を進めることが報告されました。

3)持続可能な開発目標(SDGs)に関連した化学物質及び廃棄物の適正管理:

2015年9月の国連総会で採択された持続可能な開発目標(SDGs)を含む「持続可能な開発のための2030アジェンダ(The 2030 Agenda for Sustainable Development)」について、化学物質及び廃棄物管理に関連する側面の今後の実施において、SAICMが主要な役割を果たし得ることが確認されました。

(2)化学物質の適正管理に関する2020年目標の達成に向けた戦略的アプローチの実施

1)2020年目標の達成に向けた全体方針及び指針

2020年目標の達成に向けて実施すべき事項を定めた全体方針及び指針(Overall Orientation and Guidance:OOG)が承認されました。この中では、包括的方針戦略(OPS)で定めた5つの目的(リスク削減、知識と情報、ガバナンス、能力向上と技術協力、不法な国際取引の防止)の実施のため、核となる6つの活動分野(ステークホルダーの責任向上、化学物質関連の国内法規制強化、SDGsにおける化学物質管理の主流化、新規の政策課題の検討、情報アクセスの促進、2020年目標に向けた進捗評価)が特定されています。また、SAICM事務局に対して、2014-2016年(第3次期間)の進捗報告書を2018年に開催される予定の第3回公開作業部会(OEWG3)までに作成することが要請されました。

2)新規の政策課題及びその他懸念事項

ICCMでは、焦点をあて、適切な行動を求めること、及び協力して取り組むべき優先事項を新規の政策課題(Emerging Policy Issue:EPI)としています。本会合では、以下4つの事項が検討されました。

[1] 環境残留性医薬汚染物質の新規の政策課題への提案:

環境残留性がある医薬汚染物質(Environmentally Persistent Pharmaceutical Pollutants:EPPP)について、EPIとして啓発、理解、対策を推進していくために国際的な協力が重要であることの合意等がなされました。

[2] 毒性農薬:

毒性が高い農薬(Highly Hazardous Pesticides:HHP)について、各主体が対策の進捗状況をOEWG3及びICCM5に報告すること等が盛り込まれた提案が採択されました。

[3] 登録済の新規の政策課題(EPI)に関する進捗:

SAICMでは、塗料中鉛、製品中化学物質、電気電子機器のライフサイクルにおける有害化学物質、ナノテクノロジー及び工業用ナノ材料、内分泌かく乱作用を有する化学物質の5つがEPIとして登録されており、それぞれを担当する国際機関から対策の進捗状況が報告されました。

また、製品中の化学物質に関しては、UNEPが作成したプログラム、及び当該プログラム実施におけるステークホルダー向けガイダンスを歓迎する旨の決議が採択されました。ナノテクノロジー及び工業用ナノ材料に関しては、本分野における国連訓練調査研究所(UNITAR、本部:ジュネーブ)や経済協力開発機構(OECD)の活動を引き続き推進する等の内容が盛り込まれた決議が採択されました。

[4] 他の懸念される問題:

化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律に基づき、不可欠用途以外での製造・使用が原則として禁止となっているPFOS及びその関連化合物を含むパーフルオロ化合物について、管理及びより安全な代替物への移行に関する最新情報がOECDとUNEPより報告されました。

(3)2020年以降の化学物質及び廃棄物の適正管理

今次会合では、2020年以降の化学物質及び廃棄物の適正管理に関する決議が採択されました。この決議により、2020年までの検討プロセスとして、①これまでのSAICMの取組状況に関する独立評価を実施すること、②全てのステークホルダーに開かれた会期間プロセスを設置すること、③独立評価の結論及び会期間プロセスの検討結果についてOEWG3及びICCM5で検討すること等が決定されました。

(4)ハイレベル対話

10月1日(木)には、政府、国際機関、企業、NGOの代表者が参加し、2020年目標の達成に向け、様々な主体が参画する包括的な枠組みである「SAICMモデル」の活用についてパネルディスカッションが行われました。また、10月2日(金)には、2020年目標の達成及び2020年以降の化学物質管理へのビジョンを定めるための基調講演が行われました。

(5)我が国の化学物質管理に関する取組の発信

我が国は日本ブースを設置し、SAICM国内実施計画の進捗状況の点検結果をはじめとした、我が国の化学物質対策に関する取組について情報発信を行いました。

また、サイドイベントにおいて、我が国がリード国として取組を主導し、水銀廃棄物の適切な管理に向けた技術的な事項をわかりやすくまとめたUNEP水銀パートナーシップ廃棄物分野において策定された「水銀廃棄物の貯蔵と廃棄の実務のためのソースブック」の出版イベントをUNEPと共同で開催しました。

(6)その他

・第5回国際化学物質会議(ICCM5)までの5年間をカバーするSAICM事務局の2016~2020年の予算が採択されました。

・ICCM5に関しては2020年に開催される予定になっています。開催地については現時点では未定です。

4.評価及び今後の対応

環境省としては、2020年目標の達成に向けて実施すべき事項を定めた全体方針及び指針(OOG)が承認されたことは、取組を強化する上で重要なものと評価しています。今後進められる2020年以降の国際化学物質管理についての議論等も注視しつつ、関係省庁を含む様々な主体と連携して化学物質対策を総合的に推進していきます。

 

連絡先
環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課
(代表:03-3581-3351)
(直通:03-5521-8261)
課長  :立川 裕隆(内:6350)
課長補佐:斉藤 貢 (内:6368)
係長  :稲子谷昂子(内:6356)

関連情報

関連Webページ

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過去の報道発表資料

平成27年9月18日
第4回国際化学物質管理会議(ICCM4)の開催について(お知らせ)