環境省:平成27年度海洋ごみ調査の結果について

2017年3月23日

http://www.env.go.jp/press/103845.html

平成29年3月23日

水・土壌

 

平成27年度海洋ごみ調査の結果について

 環境省では、平成27年度に、10カ所の海岸において漂着ごみ調査等を行い、各地点における漂着ごみの量や種類などを調べました。また、東京湾、駿河湾、伊勢湾及び我が国周辺の沖合海域における漂流・海底ごみ調査も行いました。さらに、近年、海洋生態系への影響が懸念されているマイクロプラスチックについても調査を行い、その結果をまとめました。

1.概要

環境省では、平成22年度から、海岸などにある漂着ごみ、海面に浮遊する漂流ごみ及び海底に堆積するごみ(海底ごみ)に関して、量や種類などの調査等を行っています。

漂着ごみに関しては、平成26年度までは全国7地点を対象に、自然物を含むごみの量や種類などの定点調査を行ってきましたが、平成27年度は、これまで未調査だった地点を中心とした10地点を対象に、同様の調査を行いました。

また、漂流ごみ及び海底ごみに関しては、平成27年度は、東京湾、駿河湾及び伊勢湾を対象に、プラスチック類等の人工物を中心に量や種類などの調査を行うとともに、本州等の沖合海域等において、存在量等の調査を行いました。

さらに、近年、海洋生態系への影響が懸念されているマイクロプラスチック(マイクロビーズを含む)※1、2についても調査を行いました。この他、我が国の沖合海域で観測された漂流ごみの観測前後の漂流経路や漂着地域の推定を行うために数値シミュレーションを実施するなど、我が国周辺の海洋ごみに関する実態調査を進めました。

※1 マイクロプラスチック:微細なプラスチックごみ(5mm以下)のこと。含有/吸着する化学物質が食物連鎖に取り込まれ、生態系に及ぼす影響が懸念されています。

※2 マイクロビーズ:マイクロプラスチックのうち、マイクロサイズで製造されたプラスチックで、ビーズ状のもの。

2.調査結果

(1)漂着ごみの実態調査

① 各海岸における漂着ごみのモニタリング調査

平成27年度は、平成26年度までの定点調査で対象としてきた1地点(沖縄県石垣島)を含む10地点※3において、漂着ごみの量や種類などを調査しました。人工物の構成比を容積ベースで見た場合、漁具、ペットボトル、プラスチック類の3品目が上位を占めていました(別添1-1)。また、各調査地点で回収されたペットボトルの製造国別比を言語表記等から推定すると、例えば、沖縄県石垣島では約8割を中国製が占めた一方、東京湾岸の富津では日本製がほとんど全てを占めていました。(別添1-2)。

※3 平成27年度のモニタリング調査は、調査実施時期が冬期となり日本海側及び北海道沿岸では調査が困難であったため、太平洋側、瀬戸内海沿岸及び南西諸島を対象としました。

 

② 全国的な漂着ごみの回収量等のとりまとめ

地方公共団体、民間団体等において平成26年度に回収された漂着ごみ(自然物を含む)の量をとりまとめたところ、約4.9万トン(平成25年度は約4.5万トン)となりました。

(2)沿岸海域における漂流・海底ごみの実態調査

① 漂流ごみの目視観測調査

東京湾、駿河湾及び伊勢湾ののべ10海域において、目視観測による漂流ごみの量や種類などを調査しました。

発見された漂流ごみ(計3,686個)のうち人工物は約25%(921個)を占め、人工物のうち種類別の個数では、プラスチック類、レジ袋等の包装材、トレイ等の食品包装、ペットボトルが多く見つかりました(別添1-3)。

② 海底ごみの回収調査

東京湾、駿河湾及び伊勢湾において、夏季・冬季のそれぞれで、各地域の8つの漁業協同組合の協力を得て、海底ごみを回収し、このうち人工物について、その量や種類などを調査しました。

この結果、ほとんどの調査地点において、プラスチック類が人工物の海底ごみに占める割合が高いことがわかりました。また、金属類は容積ベースでみると割合が小さいものの、個数・重量でみるとプラスチックに次ぐ回収量となる調査地点が多くなりました(別添1-4)。

(3)沖合海域等における漂流・海底ごみの実態調査

① 漂流ごみの目視観測調査

本州・四国・九州周辺の沖合海域において、東京海洋大学練習船(海鷹丸、神鷹丸)によって、目視観測による漂流ごみの量や種類などを調査しました。

その結果、人工物については、日本海北部の海域で見つかった量が86.0個/km2と最も高くなり、次いで東シナ海の82.8個/km2(他海域では32.5~66.1個/km2)となりました。また、自然物については、東シナ海から日本海西部にかけての海域で見つかった量が73.7~75.0個/km2と高い密度(他海域では19.0~41.1個/km2)となりました(別添1-5)。

② 海底ごみの回収調査

常磐沖及び鹿児島周辺海域(薩摩半島南方沖及び鹿児島湾内)において、東京海洋大学練習船の他、鹿児島大学、漁業関係者等の協力を得てトロール網を用いた調査を行い、海底ごみを回収し、その量や種類などを調査しました。

人工物については、鹿児島湾内では11.61kg/km2が最も高い密度であった一方、常磐沖では最高で100kg/km2を超える箇所がありました。一方、自然物については、常磐沖で最も密度が高かった地点では51.4kg/km2の海底ごみが回収されましたが、鹿児島湾内では、最高で280.7kg/km2が回収され、調査海域によって回収量に占める人工物と自然物の比率が異なりました(別添1-6)。

(4)マイクロプラスチックに関する調査

① 沖合海域におけるマイクロプラスチックの調査

沖合海域における漂流ごみの目視観測調査に併せ、本州・四国・九州周辺の沖合海域において、ニューストンネット(表層を浮遊するプランクトン等の採取に用いるネット)を用いて、合計78地点でマイクロプラスチックを採取するとともに、サイズ別に分類して、その数を計測しました。

その結果、平成26年度調査と合わせてみると、日本海北部や九州周辺で相対的に高い密度を示す傾向が見られました。(別添1-7)。

② 沿岸海域におけるマイクロプラスチックの調査

沿岸海域(東京湾、駿河湾及び伊勢湾内)における漂流ごみの目視観測調査に併せ、これら海域の計20地点において、ニューストンネットを用いてマイクロプラスチックを採取するとともに、サイズ別に分類して、マイクロビーズも含め、個数を計測しました。

計測個数に基づき各調査地点におけるマイクロプラスチック全体の海中密度を算出したところ、東京湾の2地点において相対的に高い密度(5.1~9.7個/m3)となりました(他地点は1.6個/m3以下)。また、マイクロビーズの個数密度については、マイクロプラスチック全体に占める割合は1%以下でした。なお、マイクロビーズは東京湾では7地点の調査地点のうち3地点で、伊勢湾では10地点の調査地点のうち3地点で採取されましたが、駿河湾では採取されませんでした。(別添1-8)。

③マイクロプラスチックに含まれる有害物質(POPs)の調査

漂着ごみに係る実態調査の一環として、海岸18地点、海上10地点で採取されたマイクロプラスチックについて、残留性有機汚染物質(POPs: Persistent Organic Pollutants)※4に関する分析を行いました。

POPsのうち、漂流中に表面に吸着すると考えられるポリ塩化ビフェニル(PCBs)については、東京湾や大阪湾などの都市部に隣接する内湾では相対的に高濃度(マイクロプラスチック1gあたり数百ng)であった一方、南西諸島などでは低濃度(同数ng)であり、これらはそれぞれ他の先進国の都市近郊の水域や離島で観測されものと同程度でした。また、過去に製造された製品中に添加されていたと考えられるポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDEs)については、マイクロプラスチックのサイズによっては、沿岸海域と沖合海域において含有濃度が比較的変化しない場合がみられました(別添1-9)。

※4 残留性有機汚染物質(POPs):難分解性及び生物蓄積性を有し、国境を越えて長距離を移動して環境汚染を引き起こすおそれがある物質として、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」の下で、我が国では製造・使用が原則禁止されています。

(5)その他の取組

沖合海域における漂流ごみの目視観測調査において実際に観測された漂流ごみの場所や種類をもとに、海流や風のデータを用いてシミュレーションを行い、それらの観測前後の漂流経路や漂着地域の推定を行いました。

添付資料

連絡先
環境省水・大気環境局水環境課海洋環境室
直通  03-5521-9025
代表  03-3581-3351
室長   平野 智巳 (内線6630)
室長補佐 森田 紗世 (内線6631)
担当   野々村 知之(内線6509)
甲斐 文祥 (内線6615)