10月5日:全加工食品に原産国表示 政府素案 主な原材料義務化

2016年10月5日

朝日新聞2016105
全加工食品に原産国表示 政府素案 主な原材料義務化

 

レトルト食品や菓子類など国内で製造されたすべての加工食品について、主な原材料の原産国表示を原則的に義務づける素案を国がまとめた。5日の有識者検討会で提示する。早ければ来年にも新しいルールができる見通しだ。

 

数年の準備期間検討

これまで加工食品全体の12割とみられる一部食品にしか義務づけられていなかったが、消費者が食品を選ぶ際の判断材料となるよう全加工食品に広げる。

現行のルールでは、魚の干物や野菜の漬物など加工度が低い22食品群・4品目に限り、食品中の重さが50%以上を占める原材料について原産国表示を義務づけている。

消費者庁と農林水産省がまとめた新ルールの素案では、重さ50%に満たないものも含め食品中の重量1位の原材料について、原産国を表示。複数国産の素材を混ぜ合わせている場合は、重量の順に国名を上位3カ国程度まで記載する。

例えばしょうゆ。現在は表示が義務づけられていないが、新ルール案では、原材料で重量が最も重い大豆について、原産国を表示する。また、複数国の大豆を混ぜて使っている場合、重量順に「アメリカ、カナダ、ブラジル」などと国名を表記する。

一方、原産国表示が難しいケースもあり例外の表示案も提示する。国のサンプル調査では、重量1位の原材料がすでに加工されたものである食品が約半数にのぼることがわかった。例えばチョコレートケーキの原材料のチョコレートの場合、カカオ豆など、原料の産地をさかのぼって調べるのが難しいこともある。こうしたケースでは、チョコレートの製造国を明記。例えば「ベルギー製造」と表示する。

また、天候や季節により原料供給地が頻繁に変わったり、原産国が多数にわたったりして、国名をはっきりと表示できないこともある。こうした場合、「A国またはB国」「輸入」といった例外表示も認める案を示す。今後、検討会で、これらの例外表示の是非や条件づけを詰める。

新ルールが固まれば、来年にも内閣府令の食品表示基準が改正される見通し。メーカーなどの事業者が準備する時間も必要なことから、数年程度の猶予期間を設けることも検討する。

店で調理され、その揚で販売される弁当などや、包装されていないパンなどの食品はそもそも原材料表示の対象外で、新ルールの検討対象にも入っていない。

加工食品の原料原産地表示の拡大をめぐっては、これまで消費者側と事業者側の意見がまとまらず先送りされてきた。だが今年5月、環太平洋経済連撞協定(TPP)対策を話し合う自民党のプロジェクトチームが、国産品の消費を促すために「すべての加工食品」での表示義務を提言。この方針が6月に閣議決定され、検討会での議論が進んだ。(藤田さつき)