7月12日:(環コラム)パーム油と森林破壊、関心を

2016年7月12日

朝日新聞20167121630
 (環コラム)パーム油と森林破壊、関心を
http://www.asahi.com/articles/DA3S12456284.html

 

 今年春、ボルネオ島のマレーシア・サラワク州で森林伐採について取材した。先住民が食料や薬を得るのに利用してきた奥地の手つかずの熱帯林が次々と伐採され、合板となって日本へ輸出されていることを伝えた。だが、日本とのつながりはそれだけではない。

 

 森を切り開いた後に植林されたアブラヤシ畑の広さが、地上からも飛行機の窓からも目についた。ヤシの一種。実を搾った「パーム油」は、単位面積あたりの収量が他の植物より多く、多用途に使いやすいため、生産量は年々増えている。今、世界で最も使われる植物油だ。日本でも、菓子類やマーガリン、せっけん、洗剤などの原料として日常的に使っている。

 

 生産地の大半はインドネシアとマレーシア。急速な開発で、生物多様性や、生産地の地域社会への悪影響が指摘されてきた。

 

 こうした問題に配慮して生産されたパーム油を見分けるための国際的な認証制度がある。「RSPO」だ。環境NGOのWWFが呼びかけ、欧州企業やマレーシアのパーム油業界が2004年に立ち上げた。原生林を切ったり焼いたりして畑を開くのを禁じる、などが認証の基準だ。WWFジャパンの南明紀子さんは「市場の力で生産地を変えていく試み」と言う。

 

 現在、世界のパーム油生産量の17%がRSPO認証で、会員企業は世界に2800社ある。ところが、日本企業は42社にとどまり、関心の低さが際立つ。

 

 昨年7月、日本でも環境や社会に配慮したパーム油の普及を目指す16の企業と団体が「パーム油グリーン購入研究会」を立ち上げた。「海外では熱帯林破壊の問題とあわせてパーム油のリスクが認知されている」と事務局のグリーン購入ネットワークの金子貴代さん。この春、企業向けガイダンスを作った。消費者も関心を持ちたいと思う。(神田明美)