被災地でアスベスト飛散、環境省は飛散防止指針改訂へ

2013年1月12日

時事通信2013年1月11日(金)21:13 石綿飛散、解体現場17カ所で=被災4県で確認―厚労・環境省 http://news.goo.ne.jp/article/jiji/life/medical/jiji-130111X077.html

厚生労働省と環境省が東日本大震災で被災した建物の解体現場など8県1192カ所をモニタリング調査した結果、アスベスト(石綿)の飛散量は世界保健機関(WHO)の基準(大気1リットル当たり10本以下)を4県17カ所で超えていたことが11日、分かった。

 

朝日新聞201年1月12日 石綿飛散防止へ指針改訂 環境省方針津波対策を盛る

環境省は、災害時に倒壊建物からアスベスト(石綿)が飛散するのを防ぐために自治体に示した指針を改訂する。阪神大震災を教訓に作成したが、東日本大震災でもビルの解体現場などで石綿が飛散し、津波への備えを含む新たな対策を盛り込む必要があると判断した。

 

指針は「災害時における石綿飛散防止に係る取扱いマニュアル」。2007年8月に作られ、ビニールシートなどによる応急の飛散防止措置の方法、建物解体前の事前調査や周辺住民への周知、解体現場の石綿飛散防止措置のあり方などをまとめている。石綿は繊維状の鉱物で、ビルや工場の耐火材などとして使われていた。吸い込むと肺がんや中皮腫を発症する恐れがあるため、06年に使用と製造が原則禁止になったが、建物解体時の飛散が課題になっている。

NPO法人「ひょうご労働安全衛生センター」によると、1995年1月の阪神大震災では、がれき処理などに関わった作業員4人が中皮腫を発症して労災認定を受け、懸念されていた健康被害が出始めている。

東日本大震災でも石綿の飛散が確認された。環境省の調査では宮城県石巻市など7カ所の解体現場で大気汚染防止法が定める基準(石綿製品製造工場の敷地境界で大気1リットルあたり10本以下)の1・3~29倍、厚生労働省の調査では同県南三陸町など10カ所で1・1~578・3倍の石綿が飛散していた。

仙台市の調査では、JR仙台駅前のホテルの解体現場で基準の36倍の石綿を検出。市環境対策課によると、法律で定められた現場隔離などをせずに工事をしたのが原因という。

被災地では、石綿を含んだ建材が津波で流され、持ち主の特定が困難なことから、放置されていたケースもあったという。アスベストが吹き付けられている壁などが別の建材で覆われていたため、存在に気づかずに解体して飛散させてしまうという課題も浮かんだ。

中央環境審議会は飛散防止対策の強化に向けて大気汚染防止法の大幅な改正を検討しており、通常国会に改正案が提出される見通しだ。解体工事前に石綿の有無を調べる事前調査を義務づけたり、自治体による解体現場への立ち入り権限を強化したりする内容が検討されている。環境省はこうした法改正を受けて指針も改訂する方針で、検討会を立ち上げ新年度中に作業を終える予定だ。(日比野容子)