3月17日 PRTR地域セミナーin熊本

開催案内

 

PRTR(化学物質排出)情報を活用して 有害化学物質を減らそう
-PRTR地域セミナーin熊本
日時
2012年3月17日(土) 午後1:30~4:30
場所
熊本テルサ 研修室C・D
    熊本市水前寺公園28-51  096-387-7777
 120317chirashi
内容
基調報告 PRTRデータ活用と Tウォッチの震災支援活動(30分)
Tウォッチ 理事長 中地 重晴
報告①  熊本県のPRTRの取組み(30分)
熊本県環境生活部環境保全課
報告②  熊本大学における 化学物質管理とPRTR対策(30分)
熊本大学環境安全センター 准教授 山口佳宏氏
報告③  白川中流域の地下水涵養と 減農薬・省化学肥料の取組み(30分)
環境ネットワークくまもと 専務理事 井上 智
質疑応答と意見交換
開催趣旨
2001年から施行されたPRTR制度は、日本国内で環境中に排出、移動された有害化学物質の量を把握することを目的としています。事業者が届出たデータを国が集計するだけでなく、農業や家庭、自動車排ガスなどの届出対象外、非点源からの排出量を国が推計し、取りまとめたデータを公表する制度です。すでに2回集計公表が行われました。
しかしながら国が公表する画一的な集計情報だけでは、一般市民にとって意味のある情報を読みとることは容易ではありません。また、有害化学物物質の人への健康影響から生態系への影響に至るまで、多様な市民の関心に応えることもあまり期待できません。
有害化学物質削減ネットワーク(Tウォッチ)は、市民の立場から、市民に役立つPRTR情報を、できるだけ分かり易くインターネット上のホームページを中心に提供しようと活動してきた団体です。一人でも多くの市民が化学物質問題に関心を持ち、化学物質による環境リスク削減に積極的に参加することを願っています。
本研修会(地域セミナー)は、有害化学物質を削減するため、リスクコミュニケーションにPRTR情報をいかに活用するのか、その方法について検討しようと企画しました。多くの方のご参加と、会場からの活発な意見発表や討論をお願いする次第です。
参加費 無料
主催 特定非営利活動法人 有害化学物質削減ネットワーク(Tウォッチ)
協力 九州環境パートナーシップオフィス
後援 熊本県環境保全協議会お問合せ・申込:NPO法人環境ネットワークくまもと
申込フォーム:http://goo.gl/6x93h
E-mail:home@kankuma.jp
定員40名。この学習会は平成23年度地球環境基金の助成を受けています。

 


開催報告

3 月17 日(土)、2011 年度地球環境基金の助成金によるTウォッチ及びNPO 法人環境ネットワークくまもと主催の地域セミナーが熊本(会場:熊本テルサ)で開催された。参加者は、講師を含め25 人であった。セミナーは、まず当ネットワーク中地理事長から基調報告として「PRTR データの活用とTウォッチの震災支援活動」が報告され、その後行政(熊本県)、PRTR 指定対象事業所として熊本大学、市民団体から環境ネットくまもとが報告し、最後にディスカッションが行われた。
主な発表及びディスカッションの概要は以下のとおりである。


■行政の発表
熊本県環境生活部環境保全課宮本俊さん
PRTR 第1 種化学物質の排出量・移動量合計は全国及び熊本県とも減少傾向にあり、2003 年度に5,000t 程度であったのが2009年度では3,500t 程度(全国の概ね1%)となっている。減少しているのは2008 年のリーマンショックの影響もあるが、事業者が化学物質のリサイクル率を上げたことが考えられる。業界団体に対し対象事業所に届出をするよう働きかけており、県の届出事業所数は600 前後(全国では約4 万、2009 年度データでは熊本県は全国中24 番目)で比較的多く届け出られていると考えている。県の排出・移動量合計の上位5 種及びその割合は、船舶製造・修理業等28%、プラスチック製品製造業20%、酒類製造業12%(大半が移動量)、輸送用機械器具製造業10%、並びに化学工業7%であり、全国(化学工業27%、輸送用機械器具製造業13%、プラスチック製造業10%、鉄鋼業8%、機械金属製造業7%、その他35%)と比べると特異的である。熊本県では、PRTRデータを利用して事業者の所在地・業種・取扱化学物質等から水質汚濁防止法における河川等の要監視項目測定の地点選定や、大気汚染防止法における工場立入検査時の参考資料、工場事故時の参考資料としている。また、PRTR 制度は事業者の自主管理を目的としているが、事業者による情報公開・リスクコミュニケーションの開催に発展すべきものと考えており、毎年5 月に事業者を対象に開催しているPRTR研修会ではこれらの推進を呼びかけている。


■PRTR 対象事業所の発表
熊本大学環境安全センター准教授山口佳宏さん
熊本大学環境安全センターは、化学物質の安全管理、環境保全、薬品管理に関する指導、環境報告書取りまとめ、廃棄物対策、大気・水質測定等を行っている。熊本大学は総合大学で、化学物質を扱うのは理学・医学・薬学・工学の各学部や大学院、発生医学研究所、並びにエイズ学研究センターなどいくつかの学内共同教育研究施設があり、化学物質取扱グループは全部で約280 グループになる(熊本市内の12 地区に分散)。
大学は、企業と異なり化学物質の取扱量は少ないが、取扱う種類・グループ数が多く、そのため法規制の幅が広くなり、また取扱者(学生)の技術が未熟なこともあり化学物質の管理が複雑になっている。この複雑な管理に対処するものとして6 年前に薬品管理支援システム「YAKUMO」というデータベースを作成した。各部局の化学物質責任者が使用でき、化学物質の購入・保管・使用・廃棄量の集計が行え、各物質の有害性・法規制情報・有害危険性物質在庫情報等が把握できる。取扱量・移動量は、このシステムで把握できるが、大気・水域への排出量は実測する必要があるが対象物質が多いため難しい。
熊本大学の使用量上位10 の化学物質(表1)のうち届出をしている(取扱量1t 以上)のはノルマルヘキサン及びジクロロメタンの2 物質で、ホルムアルデヒドは溶液としては使用量が多いが濃度が低く届出していない。労働安全衛生法により年2 回作業環境測定を行っているが、測定件数1000 件中数件が管理濃度を上回ることがある。大学では学生に化学物質の適正な取扱いをする教育を行うことが使命で、また化学物質管理の様々な問題に対処できるよう化学物質管理担当者の大学間の連携を図り情報交換を行っている。


■市民団体の報告
環境ネットワークくまもと専務理事井上智さん
熊本市及びその周辺地域では、その飲料水として100%地下水を使用しており、全国的・世界的に例がない。阿蘇山を源流とした白川が熊本市を流れ有明海に注いでいるが、その中流域には加藤清正(1588 年)時からの開田・堀の設置拡大と、その地下層に阿蘇山の火山活動により出来た砥川溶岩層(穴や割れ目が多く水を蓄える)により豊富な地下水が蓄えられている。砥川溶岩層が切れる下流域は、湧水地域となり水が湧出している。しかし、都市開発や米の減反政策等による水田の減少により水前寺・江津湖周辺の湧水量が1991-2001 年の10 年間で20%低下した。
環境ネットくまもとでは、ソニー熊本TECに年間地下水使用量と同量の水を作付前に水田転用畑に水張り涵養することと、涵養田でとれた作物を社員食堂等で使うことはできないか提案し、2004 年、年間水使用量約90 万t の地下水涵養が実現した。これをきっかけに熊本市は涵養域の自治体・農家と連携し水田涵養助成事業を開始し、また涵養農作物は「水の恵み」というブランド名で販売されることになった。また、後に「水の恵み」に地下水涵養証としての「ウオーターオフセット」(米の場合、米1kg に対し地下水涵養量26t)を添付し、その農作物を学校・企業・病院等の食堂で利用してもらうことで、地産地消(地域貢献)・地下水資源保護の循環を提案することになった。熊本学園大学では、年間約15tのウオーターオフセット米を購入し当大学年間水使用量の5 倍(約40 万t)の地下水涵養効果をもたらした。
一方で、地下水涵養拡大により、水の溜まりにくい(ザル田)白川中流域の田での養分流出及び畑残留肥料(硝酸態窒素)の地下水汚染の懸念があったが、上流の阿蘇山火山岩地帯はミネラルが豊富で、湛水により逆にミネラルが増加することがわかり、また湛水した作物ではしないものに比べて生育が良かった。畑での湛水は、夏場に40 日以上土壌を湛水及び高温・還元状態に維持することにより農薬を使用せずに線虫等土壌病害虫が防除できる。湛水による硝酸態窒素の地下水汚染についても、流入した硝酸態窒素42g/㎡中、初期溶脱5.4g/㎡、脱窒・植物体吸収は20.1g/㎡であり、流出水及び浸透水として流出するものはそれぞれ6.4g/㎡及び20.9g/㎡と流入量の一部であることがわかった。
大津町では、2007 年度より農薬・化学肥料使用量50%カット米を「水の恵みエコ米」ブランドで販売(現在個人への販売はされていない)し、今後、栽培面積・販売先の拡大を目指している。
事業者による化学物質管理・削減には、ISO14001 導入・PRTR 制度実施等によるほか、地下水涵養に参加すること等により間接的に企業の社会的責任としての社会貢献があげられる。


ディスカッション
Q1:届出外の集計はどう算出しているか?
A1:国で行っている。推計方法の基本的な考え方はホームページに掲載されている(http://www.env.go.jp/chemi/prtr/result/todokedegaiH22/kihon.html)。環境省の委員会で毎年推計方法・係数の妥当性を検討している。
Q2:メーカーによって有害物質の使用不使用があるが、なぜ不使用にならないのか?
A2:消費者が選択する話で、消費者が有害物質含有品を購入しなければ淘汰される。
Q3:焦げ付かないフライパン・魚を焼くシートは危険なのか?
A3:フッ素樹脂そのものの毒性がいくつかあるが、どの程度溶出しているかのデータはなく人体影響については不明である。
Q4:重みづけ係数はどう重みづけするのか?
A4:エコケミストリー研究会のホームページに算出の仕方が掲載されている。基本的には大気の環境基準値の逆数を使うが、それがないものについては作業環境管理濃度を使用し、この値の1/300 が大気環境基準値に相当するだろうとし、その逆数を使うなどしている。
Q5:エコアクション21*1 の検査に行った時、低負荷のものをどう探のかと問われた。
A5:メーカーや業界に低負荷のものがあるかどうか聞くなどの方法がある。
*1:エコアクション21:環境監査のミニ版
Q6:化学物質に関して知識がないと過度に不安を持つ場合と全く無頓着の2 つが大きな問題だと思っているが、過剰な不安を与えないという取組をどうしているか?
A6:基準値を超えた場合の周知はしているが、定常値に対してケアはしていない(熊本県)。初めは過度に反応してもいいと思っている。その後で調べていけばいいと思う(環境ネットワークくまもと)。
Q7:PRTR 情報を活用して防災にどう役立てて行こうと考えているのか?
A7:そこまで計画には盛り込んでいない(熊本県)。
どこに何があるか不明なため学内のハザードマップ作製が先と思う(熊本大学)。
貯蔵量や保管料をPRTR 制度で報告するよう提案している(Tウォッチ)。


(Tウォッチ事務局)