8月13日:フジツボ戸惑う塗料、船底への付着防ぐぞ 日ペが開発

2016年8月13日

朝日新聞20168131446
フジツボ戸惑う塗料、船底への付着防ぐぞ 日ペが開発
http://www.asahi.com/articles/ASJ843VX3J84PLFA002.html

 http://digital.asahi.com/articles/DA3S12525459.html?rm=150

 

 フジツボを戸惑わせることで船底につきにくくする塗料を、塗料大手の日本ペイントホールディングスの子会社が開発し、来年1月から売り出す。人工血管に血小板がつくのを防ぐ樹脂の技術を応用した。船と水との摩擦が小さくなって燃費が良くなり、二酸化炭素(CO2)の排出量は既存の標準塗料より15%以上抑えられるという。

 

 フジツボや緑藻、ミドリイガイなどが船底につくと船が重くなったり、水との摩擦が増えたりして速度や燃費が悪くなる。いまは亜酸化銅など、生き物を殺す物質を少しずつ海中に出す塗料で防いでいるが、環境面で問題があった。

 

 フジツボの幼生は、岩や船底などのつく先の性質に合わせて分泌物を出して、くっつく。新しい塗料を船底に塗ると、表面に水になじむ性質と、なじまない性質が超微細にまだらに並ぶ。このため、フジツボがどんな分泌物を出せばいいのか分からなくなるという仕組みだ。

 

 ログイン前の続き同じような仕組みは、血小板が人工血管の中で固まるのを防ぐ樹脂の構造にあり、これにヒントを得た。

 

 新塗料を神戸大学の練習船や今治造船の新しい船で試したところ、生き物の付着が減り、燃費は10%以上よくなった。腐食を防ぐ下塗り塗料などと組み合わせると、水との摩擦は約20%減るという。

 

 新塗料はこれまでのように生き物を殺す成分を使わないため、こうした成分を持つ化学物質が規制されても使える。

 

 国際航路を行き来する船は世界で約4万6千隻とされ、CO2排出量は2012年で約7・9億トン。ドイツ1国分を上回る。日ペの試算では、すべての船に新塗料を使えばCO2排出量は年1億トン(スギ約71億本分)減らせる効果が期待できるという。(伊沢友之)