6月14日:家に眠る「水銀」を処分 体温計・血圧計、分別して回収へ

2016年6月14日

朝日新聞20166141630
家に眠る「水銀」を処分 体温計・血圧計、分別して回収へ

http://www.asahi.com/articles/DA3S12408575.html

 

 水銀の規制が厳しくなっている。大気中に排出されると、地球全体をめぐって人や野生生物にとりこまれ、環境や健康に影響を与えるおそれがあるからだ。家庭でも、一昔前までは体温計などの身近な製品に水銀が使われていた。今でもかなり残っているらしい。どう処分すればよいのか、調べてみた。

 

 体温計といえば今はデジタルの電子式が当たり前だが、昔は細いガラス管に入った水銀を目盛りで読みとるアナログの水銀式だった。記者も子どものころに使った記憶がある。実家を調べたら、やはり2本出てきた。

 

 東京都世田谷区が5年前から家庭で眠る水銀式体温計などの回収を呼びかけ始めたところ、引き取り量は年々増えている。2015年度は区内11カ所の専用箱などで体温計372本、血圧計75個を回収した。笹本修事業課長は「高齢者などのご家庭から問い合わせがあり、自宅に取りに行くこともあります」。

 

 ログイン前の続き水銀式血圧計は、看護学校に通っていた人が授業で使うために買い取ったまま保管されていたものが目立った。京都大などの10~11年の調査によれば、水銀式体温計は使用中も含め一世帯あたり平均1本あるという。

 

 1980年代、家庭用品に含まれる水銀が社会問題になり、大量に使われる乾電池や蛍光灯は分別回収が広まった。一方、比較的数が少ない体温計や血圧計は回収が進まなかった。だが、蛍光灯と比べると、体温計に含まれる水銀は約200倍、血圧計は約8千倍に達する。

 

 環境省によると、国内約300地点で観測される大気中の水銀濃度は、健康に影響が及ぶ水準より十分低い。ただ、こうした体温計などが可燃ごみに混ざると、水銀が大気中に排出されてしまう。東京23区のごみ焼却場では、排ガス中の水銀濃度が自主的な基準値を超えて運転を止めた例が10年以降に9工場で計17回あった。東京二十三区清掃一部事務組合の塚越浩・技術課長は「清掃工場にも、ある程度の水銀を除く能力はあるが、水銀処理施設ではないのでごみに混ぜないでほしい」と話す。

 

 環境省も、水銀の管理を世界的に強化することを定めた「水銀に関する水俣条約」を受け、大気への排出を規制することにした。今月、基準値が決まった。ごみ焼却場も対象だ。

 

 水銀式の体温計などは、不燃ごみに混ぜて埋め立てるのも望ましくない。だが、分別回収する自治体はまだ少数だ。環境省は今年度、庁舎などに専用箱を置いて回収を呼びかけるモデル事業を昨年度の15市から3倍程度に増やす。各地の医師会と組んで医療機関からの回収にも乗り出している。(小堀龍之)

 

 <eco活の鍵>

 

 電子式の体温計も、水銀と無関係とはいえない。電源に微量の水銀を含むボタン型電池が使われているケースがある。腕時計や補聴器、小型のおもちゃなどの電子機器も同様だ。使用済みのボタン電池はセロハンテープで絶縁し、電器店などに置かれている回収専用缶へ入れる。問い合わせはボタン電池回収推進センター(0120・266・205)へ。

 

 蛍光灯やランプなどにも水銀を含む製品がある。水銀を含むごみの処分方法は、指定の箱に入れたり、燃えないごみの日に出したり、自治体ごとに異なる。住んでいる市区町村に問い合わせるとよい。