2月1日:(社説)建設石綿判決 国も企業も救済に動け

2016年2月1日

朝日新聞2016210500
(社説)建設石綿判決 国も企業も救済に動け
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12188058.html?_requesturl=articles%2FDA3S12188058.html&rm=150

  4度にわたって国が一審で敗訴した事実は重い。被害者を救済するため、国はすみやかに支援に動くべきだ。

 建設資材に含まれるアスベスト(石綿)の粉じんを吸い、中皮腫や肺がんなどを患った元建設作業員と遺族の計27人が、国と石綿建材メーカーを訴えた裁判で、京都地裁は両者の責任を認める判決を出した。

 判決はこう指摘した。

 国は70年代初めには石綿の危険性に気づけた。それなのに作業現場で防じんマスク着用などを義務づけなかった――。

 そして東京、福岡、大阪各地裁に続き、原告に賠償するよう命じた。

 原告らは、呼吸困難を伴う疾患を抱えながら法廷闘争を続けてきた。「命あるうちの決着を」が共通する願いだ。同種の訴訟は全国7地裁・高裁で係争中だが、国は和解などを模索すべき段階ではないか。

 注目すべきは初めて建材メーカーの責任を認めたことだ。

 石綿工場の元労働者らが訴えた泉南アスベスト訴訟などと違い、この訴訟の原告は建設作業員として各地の現場を渡り歩き、石綿を扱った人たちだ。どの現場の、どの石綿建材が原因で発症したのか、因果関係の特定は極めて難しい。

 22日の大阪地裁判決もメーカーへの請求は棄却した。

 これに対し京都地裁は、石綿を含む建材を警告表示なく流通させたこと自体が「加害行為にあたる」と認定した。そのうえで、「おおむね10%以上のシェアのあるメーカーが販売した建材が被害を与えた蓋然(がいぜん)性が高い」とし、一定の条件に合うメーカーに賠償を命じた。

 広く救済に道を開く先例として、今回の判決は他の裁判にも影響を与えるのではないか。

 賠償を命じられたのは東京、大阪など6都府県の9社だ。建材メーカーはこれまで法的責任を免れてきたこともあり、原告との面会を拒否するなど、救済に後ろ向きな姿勢をとり続けてきた。原因商品を作った立場として、少なくとも国とともに救済策を考えるべきではないか。

 石綿は70~90年代に大量に輸入され、用途の8割以上が吹きつけ材や屋根などの建材だ。石綿疾患の潜伏期を考えれば、今後も健康被害が続くだろう。

 06年にできた石綿健康被害救済法で、月約10万円の療養手当などが支給されるようになった。だが、まだまだ不十分だという批判がある。原告らは国やメーカーなどによる新たな基金の創設を求めている。判決を機に議論を深める時に来ている。