10月21日:石綿訴訟、全面解決へ 高裁差し戻し28人と国が和解方針

2014年10月22日

日経新聞2014/10/22 0:59
石綿訴訟、全面解決へ 高裁差し戻し28人と国が和解方針
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG21H1K_R21C14A0CC1000/

  大阪・泉南地域のアスベスト(石綿)工場の元従業員らが、国に損害賠償を求めた訴訟をめぐり、塩崎恭久厚生労働相は21日、最高裁が審理を大阪高裁に差し戻した原告28人と和解に応じる方針を明らかにした。近く原告と面会し、謝罪する。提訴から約8年半にわたった泉南アスベスト訴訟は全面解決に向かう見通しとなった。泉南以外の工場の元従業員についても救済の可能性を探る。

 9日の最高裁判決はアスベストの健康被害が「1958年ごろには深刻だと判明していた」と指摘。速やかに排気装置の設置義務付けなどを行わなかった国の責任を認めた。「第2陣訴訟」の54人については賠償を命じた判決が確定したが、「第1陣」の28人について賠償額算定のため審理を差し戻し、原告側が国に対し和解に応じるよう求めていた。

 一方、塩崎厚労相は、58~71年の間にアスベスト工場で働き、健康被害を訴えている元従業員や遺族についても「最高裁判決に基づき和解の道を探る」と述べた。厚労省によると、さいたま地裁と神戸地裁で同種訴訟が係争中で、救済対象がさらに広がる可能性もある。

 ただ、建設現場の元労働者らが各地で起こしている建設アスベスト訴訟については「別問題」とした。

 今後、対象となる第1陣の28人について、大阪高裁の担当裁判官が決まった段階で和解を申し入れる。支払う賠償額は確定した54人と同じ基準で算定することになる。謝罪のための面会は「できるだけ早く」とし、今後調整する。

 塩崎厚労相は記者会見で「長い間の裁判で、ご苦労をおかけした原告に重ねておわび申し上げる。亡くなられた原告もいらっしゃり、大変申し訳ない」と謝罪した。