1月24日:水道汚染で非常事態宣言 米・フリント市で鉛検出

2016年1月24日

東京新聞2016124
水道汚染で非常事態宣言 米・フリント市で鉛検出
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201601/CK2016012402000096.html

 

 【ニューヨーク=北島忠輔】財政難に苦しむ米北部ミシガン州フリント市で公設の水道水から高濃度の鉛が検出され、オバマ大統領が非常事態を宣言して健康被害の阻止に乗り出した。米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)発祥の地として知られるが、二〇〇九年の経営破綻とともに人口が流出し財政は悪化。住民からの苦情を州当局は一年以上にわたり放置したとされ、抗議運動が広がっている。

 AP通信によると、フリント市の水道水は百キロほど離れたデトロイトから購入していた。五大湖の一つヒューロン湖から取水していたが、市はコスト削減のため、一四年四月に水源を近くのフリント川に変更。直後から変色や異臭、体調不良などの苦情が相次いだが、州の保健当局は「水は安全」と対応していなかった。

 昨年九月、医療機関の調査で子供の血液から鉛が検出されたとして、医師がフリント川の水を使わないよう警告。腐食性物質を含むフリント川の水で水道管から鉛が溶け出し、水道水に混入している疑いが強まった。市は十月に水源をヒューロン湖に戻したが、鉛の濃度は改善されていない。

 鉛中毒は脳障害などを招く可能性が指摘されており、住民らは反発。スナイダー州知事は今月に入り、連邦政府に支援を求めた。オバマ政権は十六日、非常事態宣言を出して事態に対処するよう命令。現場では州兵や現地警察、ボランティアらが住民にペットボトルの水を配っている。

 フリント市の人口は約十万人。自動車産業が市の経済を支えてきたが、GMが経営不振に陥った後は市の財政が悪化し、市街地も衰退。現在は黒人の低所得者が多く暮らしている。

 市出身の映画監督マイケル・ムーア氏は「黒人や貧困層からの訴えだったために当局は無視した。単なる水の危機ではなく、貧困層の切り捨てであり、人種差別の犯罪だ」と批判。米紙ニューヨーク・タイムズは「白人の中間所得層以上が多い地域だったら当局はもっと早く対処したのではないか」と指摘した。

 スナイダー知事は対応の遅れを認め謝罪したが、「人種差別は関係ない」と否定している。