震災がれき、想定より少なく 宮城、推計の3分の2 広域処理見込みも大幅減

2013年2月23日

朝日新聞201年2月23日 震災がれき処理46%3県岩手・福島では遅れ

東日本大震災により岩手、宮城、福島の3県で発生したがれきについて、環境省は22日、1月末時点で46%分の処理が終わったと発表した。震災から2年がたつ3月末時点で6割近くを処理する中間目標を、宮城は達成できる見通しだが、岩手は難しい状況。目標が設けられていない福島は、原発事故の影響で処理が遅れている。

発生したと推定される1628万トンのうち、1月までに焼却や埋め立てなどで処理されたのは754万トン。半年前の2倍近くに伸びた。処理済みの割合は宮城が51%、岩手は39%、福島は31%で、地域で差が出ている。

一時期受け入れが難航した岩手、宮城の県外広域処理分は、当初の見込みから順次下方修正され、現在は処理済み分も含めて69万トン。このうち62万トンは15都府県で受け入れ先が確保された。残る7万トンについても、環境省は3月末までに確保する方針だ。

また、岩手、宮城の仮設焼却炉は1月末までに31基すべてが設置を完了。広域処理も進んできたため、環境省は両県について、昨年夏に作った工程表通り、来年3月までに処理を終えられるとみている。ただ、福島は広域処理がなく県内での焼却も遅れているため、来年3月の終了は難しい状況だ。

一方、津波で海底から打ち上げられた土砂は、がれきに比べ処理が大きく遅れている。発生推計量1040万トンに対し、1月までに処理されたのは189万トンで、全体の18%にとどまる。岩手、宮城とも3月末の中間目標は達成できない見通しだ。(神田明美)

 

被災3県の震災がれき・津波土砂の処理状況(1月末現在)

発生推計量(万トン) 処理が終わった量(万トン) 処理した割合(%) 今年3月末の処理目標(%)
岩手県 震災がれき 366 142 39 58
津波土砂 159 14 9 50
宮城県 震災がれき 1103 563 51 59
津波土砂 728 171 24 40
福島県 震災がれき 160 49 31
津波土砂 153 3 2
3県合計 震災がれき 1628 754 46
津波土砂 1040 189 18

 

日新聞2013年2月23日 がれき想定より少なく 宮城、推計の3分の2

津波被災地のがれき処理が徐々に進んでいる。がれき量が当初の推計より少なく、焼却処理施設の稼働も始まったため、可燃がれきの県外処理を今年度で終える自治体も出てきた。一方、被災者の雇用確保のため、時間をかけても地元で処理したいという声もあがっている。

広域処理見込みも大幅減

被災3県の震災がれき全体の7割が発生した宮城県。建設を進めていた26基の焼却処理施設は今月、本格的に動き始めた。1日あたりの焼却量は最大計4千トン。県は「可燃物は、最終処理目標の来年3月までに県内の施設だけで処分できる見通しがほぼたった」という。

ただ、がれき処理が順調にみえるのは、実際には当初の推計ほど発生しなかった面がある。県は当初、仮置き場に搬入されたがれきの山を空撮し、抽出した木材や金属などの割合から全体量をはじいた。分別が進んだ1月、再利用できる土砂やコンクリートの塊が多く含まれ、必要処理量が想定の3分の2だったことがわかった。

被災住宅も、県は昨年7月時点で3万3干棟の解体が必要としていたが、1月の調査で2万7干棟に減った。仮設住宅で暮らす被災者が自宅を物置代わりに使っていたり、津波が来た時に壊れた家が想定よりも多く海に流れていたりしたことがわかった。

宮城の可燃物と岩手の木くずの被災地外での広域処理は3月末に終了する。残る岩手の可燃物も12月末に終える。広域処理にあてる量は当初、岩手、宮城両県で401万トンと見込まれたが、今年1月に69万トンに下方修正された。「一日も早く処理を始めるには推計で全体量を出さざるを得なかった」と県担当者は話す。

一方、受け入れを進めた自治体から戸惑いの声があがる。「大騒ぎした割に量が少なかった。拍子抜けだ」。静岡県島田市の桜井勝郎市長は言う。3月末までに岩手県山田町で発生した木材チップ740トンを処理するが、受け入れ初日の昨年5月、焼却中に受け入れ対象外のコンクリートの塊が見つかり、住民が反発。焼却灰の景終処分場への埋め立ても反対派がロープを張って抵抗するなか、受け入れを続けた。

北九州市は宮城県石巻市のがれきを2014年3月末まで最大6万トン余り処理する予定だったが、今年3月末で約2万3千トンを処理して打ち切る。同市門司区にある処理場では住民らの賛否が割れた。地区の自治組織の兵藤静男会長(71)は昨年5月以降、受け入れをめぐって会議を20回以上重ねた。「あの苦労は何だったのか。国の見通しが甘すぎた」。兵藤さんは話す。

 

雇用の源「地元で処理を」

被災地では、広域処理をせず「地元でゆっくり処理を」という考えもある。宮城県東松鳥市では、市内の建設業者が雇う被災者らががれき処理を担っている。約50人が横一列に並び、木材やプラスチック、金属片を手作業で分別する。

「働く場所があるのが何よりもうれしい」。大友昭子さん(66)の夫婦は昨年3月から働き始めた。震災前、2人でコメをつくつて生計を立てていたが、田は津波で使えなくなった。日当8千円で作業がない日曜以外は働く。「生活の糧を得られるだけでなく、ここには被災した仲間がいる」

市内のがれきで処理できたのは約3分の1。市は「地元の業者が潤えば税収も増え、市の活性化につながる」。処理に携わる作業員約1500人のうち、職を失った市民など約900人が臨時雇用されている。

処理を請け負う業者からも同じような声があがる。がれき処理の下請けに入る岩手県宮古市の建設会社社長は「仕事を確保するため、もっとゆっくりやってもらった方がいい」。

震災前、公共事業削減が影響し、県建設業協会宮古支部の会員は2005年の44社から11年は25社に激減。今は復興事業でにぎわうが、防潮堤工事など数年で終わる仕事が多い。

三陸沿岸は人口滅で民需の将来性も期待しにくい。首長は表向き「広域処理で早期復興」と口をそろえるが、がれきは人の住んでない地区に集められ、衛生面の影響もほとんど見られないなか、「摩擦を起こしながら広域処理を進めるより、地元処理の方が雇用も生まれる」と話す首長もいる。(古庄暢、向井宏樹、伊藤智章)

環境省2013年1月25日 「東日本大震災に係る災害廃棄物処理進捗状況・加速化の取組」を策定しました。 
東日本大震災に係る災害廃棄物処理進捗状況・加速化の取組 概要
東日本大震災に係る災害廃棄物処理進捗状況・加速化の取組
参考資料

岩手・宮城がれき処理データサイト(広域処理)

http://garekikouiki-data.env.go.jp/