阪神大震災復旧時の石綿対策 防じんマスク装着2割

2013年1月9日

朝日新聞2013年1月9日 阪神大震災復旧時の石綿対策 防じんマスク装着2割

阪神大震災で倒壊した建物の解体やがれき処理をした労働者に、当時のアスベスト(石綿)対策を尋ねた初の実態調査を立命館大のアスベスト研究グループがまとめた。約7割が石綿のある現場で作業をしていたが、防じんマスクをしていたと答えた人は約2割にすぎなかった。

石綿による肺がんなどの健康被害は潜伏期間が10年以上と長く、「静かな時限爆弾」と呼ばれる。震災時の被害を巡っては、労災認定が近年相次いでいる。

調査は立命館大の立命館アスベスト研究プロジェクトが昨年11~12月に実施。京阪神の建設業関連の四つの労働組合に調査票を配り、回答を求めた。

1995年1月の阪神大震災で復旧作業の経験があると答えた人は128人。このうち、建物に吹きつけられた石綿を「触ったことがある」のは44%「見たことはあるが扱っていない」は30%だった。約7割の人が建材の中でも危険性が高いとされる吹きつけアスベストのある現揚環境で作業したことになる。「防じんマスクの配布・使用」は18%にとどまり、55%は「ガーゼマスクやタオルの使用」だった。6人(5%)が石綿肺などの石綿関連疾患にかかっていると答えた。

84%の作業員が現場周辺に住民が「いた」と答えたが、飛散防止の配慮や対策については「作業現場の隔離」が20%で、55%は「特になし」と回答した。

調査を担当した南慎二郎研究員(34)は「健康被害は今後建設労働者のみならず、一般市民の間でも顕在化してくる可能性がある」と警鐘を鳴らす。結果は12日に神戸市と宮城県石巻市で開くシンポジウムで発表する。(日比野容子)

阪神大震災とアスベスト

石綿は極めて細い繊維状の鉱物で、建物の耐火材や断熱材などに使用されていたが、現在は製造や使用が禁じられている。NPO法人ひょうご労働安全衛生センターによると、阪神大震災の復旧作業で石綿によるがんの一種「中皮腫」を発症したとして、2008年以降4人が労災認定されている。