胆管がん労災認定 厚労省方針 大阪・印刷会社16人

2013年2月20日

朝日新聞2013年2月20日  胆管がん労災認定 厚労省方針 大阪・印刷会社16人

印刷会社で働いていて胆管がんになった人や遺族から労災請求が相次いでいる問題で、厚生労働省は、大阪市の印刷会社で働いていた16人(うち7人死亡)の請求を認める方針を固めた。仕事との因果関係があるとして、時効を柔軟に運用する。胆管がんの労災認定は初めて。

時効を柔軟運用

この会社は「SANYO-CYP(サンヨーシーワイピー)」。これまで20代1人、30代7人、40代8人の計16人が請求している。

3月中旬に開く専門家検討会で認定を判断する基本的な考え方をまとめ、労働基準監督署が順次認定する。この問題は昨年5月、研究者らの調査で表面化。その後、全国の印刷会社で発症例があることが分かった。2月12日までの労災請求は計62人(死亡38人)。

厚労省は、原因の物質を特定するための調査をする一方、労災認定についての専門家検討会を昨年9月にもうけた。検討会では、作業環境や働いていた期間▽発症の時期▽同じ事業所での発症者数▽発症時の年齢▽個人特有の原因の有無、などについて議論。特に請求が多いSANYO社の16人の状況を検討してきた。

2010年に胆管がんで死亡した人は約1万3千人で、その8割は70歳以上。若い人の発症が多いSANYO社は際だっている。作業場の状況を再現して実験した結果、換気が不十分で、汚れた空気の56%が室内に戻る劣悪な環境だったこともわかった。こうしたことから、16人全員について仕事との関係があると判断したとみられる。

大阪以外の46人についても、同じ考え方で4月以降に議論する。ただ、状況が違うため、同じ結論になるかどうかはわからない。労災保険の給付には時効があり、死亡した場合は5年。厚労省は、ほとんどの労災請求について時効を数え始める起点を死亡翌日として運用している。今回の問題では、請求時点で死亡後5年を過ぎている事例が複数あるが、胆管がんが労災になる可能性が知られていなかったため、「権利を行使することができる時から進行する」という民法の原則に従って認定する方針だ。(石山英明、吉田拓史)