神戸地裁 住民の石綿被害 企業責任初認定

2012年8月8日

朝日新聞2012年8月8日 神戸地裁 住民の石綿被害 企業責任初認定

大手機械メーカー「クボタ」(本社・大阪市)の工場の周辺住民2人が死亡したのは、工揚から出たアスベスト(石綿)が原因だとして、遺族4人がクボタと国に総額約7900万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が7日、神戸地裁であった。小西義博裁判長は1人の健廉被害について、工場の石綿との因果関係を認定。大気汚染防止法に基づき、クボタに3195万円の賠償を命じた。石綿被害を巡り、工場周辺の住民の健康被害について企業側の責任を認めた司法判断は初めて。国の不作為責任は否定した。

原告は、中皮腫で1996年に死亡した山内孝次郎さん(当時80)らの遺族。山内さんは1954~75年、クボタ旧神崎工場(兵庫県尼崎市)の約200メートル先の職場に勤務していた。判決は、工場の排気や換気の状況などから、75年あるいは81年ごろまで、工場敷地外にも石綿の粉じんが飛散していたと認定。300メートル以内に1年以上住むなどして中皮腫を発症した揚合、工場が発生源と推認できると指摘。山内さんについて「工場からの石綿粉じんと死亡に因果関係が認められる」とした。(井上裕一)

 

朝日新聞2012年8月8日 石締救済見直し迫る「判決、被害住民の武器に」

大手機械メーカー・クボタの工場から出たアスベスト(石綿)が原因だとして、死亡した住民の遺族が同社と国を訴えた訴訟で、神戸地裁の判決は、工場周辺の住民被害について企業側の法的責任を初めて認めた。原告側は「石綿が労働災害だけでなく、公害を引き起こす物質であることが明らかになった」と一定の評価をした。

クボタは2006年以降、周辺住民や遺族に1人あたり2500万円から4600万円の救済金を払ってきた。今年3月末までの対象者は232人、総額は約90億円にのぼる。原告の2遺族も対象になったが、救済金を払う理由は「石綿を取り扱ってきた企業の社会的責任」。因果関係や法的責任を認めないことに納得できず、救済金を受け取らずに提訴した。

今後の救済策について、クボタの広報担当者は「従来通り対応していく」とするが、吉村良一・立命館大教授(環境法)は「クボタぱ『救済』ではなく、損害を補う『補償』の考えに立つべきだ。被害の状況によっては、現在のクボタの救済金よりも手厚い補償金の支払いが必要になるだろう」との考えを示す。独立行政法人「環境再生保全機構」が昨年発表した調査結果によると、石綿を扱う施設の周辺住民らの健康被害は全国で約1800人にのぼる。

判決後に記者会見した原告弁護団の八木和也弁護士は「周辺住民の被害は全国で出ている。企業を相手に争う際、判決は大きな武器になると思う」と述べた。