環境に優しい金製品に認証 生産過程で水銀不使用など

2015年3月18日

 朝日新聞2015318
「優しさ」まとう金の指輪 人・自然に配慮した原材料使用

世界の金鉱山の採掘現場の中には、子どもが働いていたり、健康被害や環境汚染を招く水銀が使用されたりしている場所がある。こうした問題を、極力減らして生産されたことを認証する金を材料に使ったジュエリーが、少しずつ広がり始めている。おしゃれで身につけるものだからこそ、生産地についても、考えてみませんか。

ジュエリーブランド「アール・エシカルジュエリー」や「HASUNA(ハスナ)」は、南米コロンビアにある非営利団体ARMによる「フェアマインド認証」の金を輸入し、指輸などを制作している。

ARMは、地域の人たちが手作業で金を掘り精製するような小規模金採掘の労働や環境汚染の改善を目指す団体だ。

小規模金採掘の現場では、防じんマスクや作業着など安全面の装備がなかったり、子どもが働いていたりして、労働環境が劣悪な場合が多い。公正でない価格で安く買いたたかれることもある。

金精製では、砕いた金鉱石と水銀を混ぜて炎で熱し水銀を蒸発させる方法が用いられることが多い。そのため、大気中の水銀を吸い込む危険があったり、水銀で汚染された水が垂れ流しになったりする。

世界の水銀使用と大気への水銀排出でもっとも多い原因となっているのは小規模金採掘で、地球規模の水銀管理を目指す「水銀に関する水俣条約」では、金採掘での水銀使用を減らしていくことが求められる。

ARMは、こうした問題をできる限り減らすため、さまざまな基準を満たした小規模金採掘現場に認証を与えている。アール・エシカルジュエリーとHASUNAは商品の製造、販売者としても認証を得ており、消費者が、商品の金の生産地が環境に配慮しているか知る手がかりになる。

川崎市の店舗で販充しているアール・エシカルジュエリー。ブランドを展開するアール・ジュエル・ジヤバン社長の星まりさん(34)は「つけ心地は温かいはず」と言う。

東京、名古屋市に直営店があるHASUNAは、2009年のブランド立ち上げ時から、リサイクルや生産地に配慮した金を使ってきた。「ジュエリーを身につける人だけでなく、材料の生産現場で働く人も笑顔になれるものを」と考える社長の白木夏子さん(33)にとって、おもな材料である金には、こだわりがあった。現在、フェアマインド認証を結婚指輪と婚約指輪のシリーズに使っている。

ネット販売を手がける別のブランド「Feliz(フェリーズ)」が一部の商品シリーズの材料に使うのは、「国際フェアトレードラベル機構」(本部・ドイツ)による認証ゴールドだ。ARMの認証と同じように、自然環境や労働者に配慮した基準がある。代表の柿本可奈子さん(46)は「認証ゴールドを使ったジュエリーを通じて、金生産には人や環境に負担をかけるものがあることを知ってもらえるようにしたい」と話す。

このほか、有名高級ブランドがフェアマインド認証のゴールドを採用するなど、ジュエリー業界の中には、原材料の責任ある調達に取り組む動きがある。神田明美

認証ゴールドはまだ認知度が低いのが課題。価格も高めになる。また、国際フェアトレードラベル機構は、現時点では日本国内で金の認証手続きをしていないため、日本で制作している場合、商品は認証されない。ジュエリーなどの業界、消費者双方が、金生産地の問題を知り関心を持つことが、普及のカギになりそうだ。各ブランドはオンラインでも販売している。各サイトは、アール・エシカルジュエリー(http://r-jewels.com/)HASUNA(www.hasuna.co.jp)Feliz(www.feliz-acce.com)