医療用手袋再利用で中皮腫

2012年8月29日

朝日新聞2012年8月27日 医療用手袋再利用で中皮腫 准看護師の労災認定

がんの一種「中皮腫」になった山口県内の女性准看護師(52)が労災を申請し、山口労働基準監督署から労災認定されたことがわかった。関西労働者安全センター(大阪)が27日、取材に明らかにした。准看護師側は「中皮腫になったのは、医療用手袋の再利用に用いていた粉末にアスベスト(石綿)が含まれていたためだ」と主張していた。

同センターによると、医療従事者が手袋に付着したアスベストが原因で中皮腫となり、労災認定されたのは全国初という。この准看護師は1980年から2009年まで山口県内の四つの病院に勤務。その中の一つの産婦人科病院では、手術用ゴム手袋をガス滅菌して再利用していた。ぬれた手袋同士がくっつくのを防ぐため、アスベストが混入していた粉末・タルクをまぶして使用していたという。タルクは滑石と呼ばれる鉱石で、細かく砕いて粉末にして使われる。かつて石綿が含まれていたものがあり、厚生労働省は2006年9月の労働安全衛生法施行令の改正で、0・1%以上のアスベストを含むタルクの製造などを規制した。女性は10年に中皮腫を発症。昨年8月に労災を申請し、今年7月に労災認定された。センターの担当者は「手術用の手袋の再利用は、かつて医療現場で広くおこなわれていた。被害が広がる可能性がある」として注意を呼びかけている。

 

 

時事通信2012年8月27日 海外では医師が中皮腫との報告も=吸引から10~40年の潜伏期間 http://news.goo.ne.jp/article/jiji/life/medical/jiji-120827X052.html

 

山口県の准看護師の女性が、病院で手術用のゴム手袋を再利用する際に使用していた粉末「タルク」に含まれていたアスベスト(石綿)が原因で中皮腫になったとして、労災認定された。

厚生労働省によると、これまでにタルクにより労災が認定されたのは17件。内訳は製造業が15件、建設業が2件で、医療従事者が労災認定されたのは日本では初めて。

だが、関西労働者安全センター(大阪市)によると、海外では外科医が手袋のタルクが原因で中皮腫になったとの報告があるという。

石綿を吸い込んでから中皮腫を発症するまでは、10~40年の潜伏期間がある。初期症状はせき、胸の痛みなどだが、専門的な検査をしないと分からない。

 

朝日新聞2012年8月28日 手袋に粉末「顔真っ白」労災の准看護師再利用で石綿吸引

がんの一種「中皮腫」になり、労災認定された山口県の准看護師河村三枝さん(52)が27日、大阪市内で記者会見し、約30年前に医療用ゴム手袋を再利用するため、アスベスト(石綿)を合む粉末のタルクを使った作業をしていたことが原因だったと明らかにした。作業は約5年間にわたり半月に1回程度繰り返していたという。

手袋に付着した石綿が原因で医療従事者が中皮腫となり、労災認定されたのは全国で初めて。かつて医療機関で手袋は再利用され、タルクが広く使われていた。石綿で引き起こされる中皮腫や肺がんは潜伏期間が長く、支援団体は「同種の作業に従事した人への影響が懸念される」と注意を呼びかけた。

河村さんは1981年6月から86年1月まで勤めた産婦人科医院で手袋を再利用するため、マスクをせず素手で、タルクをまぶす作業をしていた。10年に中皮腫と診断され、昨年8月に山口労働基準監督署に労災を申請し、今年7月に認定された。「タルクで顔が真っ自になる状態で仕事をしていた。中皮腫になるまで、石綿の存在もこの病気も、自分に関わりがあるとは思っていなかった」

河村さんが中皮腫と診断されたときには、すでに病が進行。タルクに含まれた石綿が原因であることも、被害者団体らの支援でようやく突き止められた。

タルク 滑石(かっせき)と呼ばれる鉱石を砕いて粉末にしたもの。ゴムなどの製造現場で幅広く使われている。採掘する際、石綿が不純物として混じることがある。1987年にタルクでできたベビーパウダーの一部に石綿が混じっていることが判明し、規制が始まった。

手袋再利用 80年代まで一般的

医療用手袋は1980年代まで広く再利用されていた。使用済みの手袋は看護師が回収、洗って乾かして再び手術に使ったという。神奈川県内の総合病院に勤めている呼吸器内科の医師は「昔は、殺菌した手袋はゴムがくっつかないよう、タルクの粉をまぶした」と話す。タルクをまぶす作業をしていた医療従事者が、石綿が原因でなる病気、胸膜プラークを発症して、診察したこともあるという。

西日本の手袋メーカーの担当者は「今も昔も新品の医療用手袋は、トウモロコシから作ったでんぷん粉をまぶしている。病院内で再利用する際には、安価なタルクを使った可能性もある」と指摘している。

タルクは医療用手袋の再利用時以外にも、ゴム製品や化粧品、製紙などの製造現場で幅広く使われてきた。厚生労働省職業病認定対策室によると、石綿を含んだタルクを扱ったことが原因で労災を認定された労働者は15人。製造業13人、建設業2人で、ほとんどが中皮腫を発症したという。石綿関係の労災認定は、厚労省のまとめでは最近5年は年1千人前後で推移している。ただ潜伏期間が平均で35~40年と長く、今後は申請が増える可能性がある。