化学工場相次ぐ爆発 団塊退職で対応力不足か

2012年10月17日

朝日新聞2012年10月17日 化学工場相次ぐ爆発 団塊退職で対応力不足か

大手化学メーカーの工場で、爆発事故が相次いでいる。この1年間で死亡事故が3件起き、化学業界は対策に乗り出した。背景には、プラントを支えてきた団塊世代のベテランが退職期を迎え、若手への経験や知識の伝承が不十分なことなどがあるようだ。

死者が出る重大事故は、2007年に三菱化学の鹿島事業所(茨城県)で作業員4人が亡くなった火災以来、しばらくなかった。ところが昨年11月、東ソーの南陽事業所(山口県)で事故が起き、さらに今年4月には三井化学岩国大竹工場(同)が続いた。石油化学工業協会(石化協)の小林喜光会長(三菱ケミカルホールディングス社長)は、9月20日の記者会見で「収益以上に安全とコンプライアンス(法令順守)が童要だ」と注意喚起した。だが、わずか9日後に日本触媒姫路製造所(兵庫県)で事故が起きた。

東ソーと三井化学の事故を調べた岡山大の鈴木和彦教授(システム安全工学)は「設備を知り尽くしたベテランが次々退職し、トラブル時の現揚の対応力が落ちている」と指摘する。

日本化学工業協会は、過去に事故を起こした企業の担当者らで保安事故防止検討会を設け、9日に初会合を開いた。石化協も近く加盟社の社長らを集めて保安懇談会を開き、経営者間で防災意識を共有する。鈴木教授は「事故が続けば国の規制が厳しくなり、安全対策などの負担がかさんで業界自体が沈みかねない。対策を急ぐべきだ」と警鐘を鳴らす。(生田大介)

■化学工場での主な重大事故

 

2007年12月 三菱化学鹿島事業所
ナフサを熱分解してエチレンなどの基礎原料を生産するプラントで火災。配管から漏れた油が発火した 作業員4人が死亡

 

11年11月 東ソー南陽事業所(山口県)
水道管などに使われる塩化ビニールの原料プラントで爆発。トラブルが連鎖し、想定外の化学反応が起きた 社員1人が死亡

 

12年4月 三井化学岩国大竹工場(同)
タイヤ用接着剤の原料プラントで爆発。トラブルで作動した緊急停止装置を、作業員が解除したのが要因 社員1人が死亡、25人けが
12年9月目本触媒姫路製造所 (兵庫県)
紙おむつの吸水材のもとになるアクリル酸のタンクが爆発。分子同士が結合する「重合反応」が原因の可能性 消防隊員1人死亡、36人けが