ガソリンスタンドとPRTR

2013年1月31日

ガソリンスタンドとPRTR

1月31日の朝日新聞で、地下タンクの改修が 義務づけられたことで、ガソリンスタンドの廃業が相次ぐという報道がありました。

そこで、ガソリンスタンドとPRTRについて、簡単にまとめてみました。

 

朝日新聞2013年1月31日 ガソリンスタンド廃業次々 地下タンク改修義務重い負担

ガソリンスタンドが淘汰の波にさらされている。古くなった地下タンクを1月末までに改修するよう義務づけられたことで、改修費用を負担できずに廃業する業者が相次ぐ。最大で2千店が廃業に追い込まれるとの見方もあり、生活に欠かせない燃料供給網が寸断しかねない事態だ。

供給網寸断の恐れも

ガソリンスタンド事業者らでつくる全国石油商業組合連合会の担当者は「3月の年度末までの店じまいは最大2千店になりそうだ」とため息をつく。

スタンドはピークの1994年度に全国約6万カ所あった。しかし、マイカー離れや燃費向上によるガソリン販売量の滅少、店舗間の価格競争もあり、年1千店以上が閉鎖する状況が15年以上続いている。2012年度はその倍の水準に増える可能性がある。

滅少傾向に追い打ちをかけたのが地下の燃料タンクの改修義務だ。老朽化したタンクは壁が腐食し、油漏れの危険があるため、設置後40年が過ぎたタンクは改修が義務づけられたのだ。その改修期限が今月31日。零細業者を中心に、廃業の申し出が絶えなかった。業界側は今後5年でさらに3500カ所程度のタンクが設置40年を迎えて改修が必要になると予想する。帝国データバンクの早川輝之氏は「閉鎖ペースが加速する可能性が高い」とみている。

地域唯一の店姿消す

山形県境に近い秋田県湯沢市院内地区。昨年の大みそか、地域で唯一のスタンド「加藤商店」が静かに店を閉じた。43年前、秋田市と福島市を結ぶ国道13号のバイパス開通にあわせて開業した。山形県側のスタンドと10キ口近く離れており、観光客や運送業者から頼りにされた。加藤俊雄杜長(83)は冬場は車の運転が困難な高齢者らに灯油を配達したりもしてきた。しかし、タンク改修義務で状況は一変した。開業時に埋設した3本のタンクすべてが対象になり、費用は総額700万円ほど。国の補助制度を利用することも考えたが自已負担が300万円近い。「大金をはたいてタンクを直しても、どれだけ続けられるか」。結局、期限の1月末までの改修をあきらめた。

老朽化した地下タンクの改修は全国的に進んでいない。消防庁によると、スタンドなどの給油施設で、おおむね40年を超えたタンクは全国で約2万9240本ある。しかし、12年9月末時点で改修されたのは1万127本で、改修率は34・6%。最も高い島根県でも64%。急ピッチの改修が進んだとしても、大幅な改修率の改善は難しい状況だ。対象タンクが1本しかない沖縄県を除き、改修率が14・2%(昨年9月末時点)と全国最低だった青森県の石油商業協同組合は「改修せずに廃業されると、過疎地が多いだけに燃料の供給ルートが維持されるか心配」という。

利用者の不便さにどう立ち向かうか。スタンドが3カ所以下の自治体を資源エネルギー庁は「給油所過疎地」と定義しているが、12年3月末で238市町村あり、拡大中だ。これまでも長野県南部の泰阜村で、村唯一のスタンドを運営するJAが08年、地下タンク老朽化で閉鎖の意向を示した際、村の有志18人が380万円を出資し、スタンドを買い取ったことがあった。宮城県七ケ宿町は、閉鎖したスタンドを自治体が引き取り、公設民営で別の企業に無償で貸し付け、再開した例もある。今回の廃業続出でも、自治体がどう対応するかが問われる。(鈴木逸弘、福山崇)

危険物の地下タンク改修義務

消防庁は2011年2月の消防法改正で、ガソリンなどの危険物の地下貯蔵タンクのうち、設置から原則として40年を経過したものに改修を義務づけた。タンクの内側を繊維強化プラスチックで覆って補強したり、地下に埋め込んだ電極に電流を流し、タンク壁面の腐食を防いだりする対策が求められる。                     記事は以上

 

補足 PRTRデータから見たガソリンスタンド

ガソリンスタンドはPRTR法の対象業種の「燃料小売業」にあたります。事業所数でいうと、届出事業所数の約半分を占めています。しかし排出・移動量からみると、全体の1%以下です。件数が圧倒的なことは、データベースで、業種を限定しないで検索すると、「燃料小売業」がズラッと並ぶことでわかります。工場がほとんどない地域では大半が石油小売業という検索結果になります。
排出される化学物質は、ノルマル-ヘキサン、トルエン、ベンゼンでほぼ100%、大半が大気中への排出となります。
朝日の記事によると、ガソリンスタンドの総数は2011年度で37743件なので、PRTRの届出届出対象になっている店は全体の半分くらいということになります。

 

2003年(平成15年度) 事業所数19023  届出事業所数41079の46%

届出排出量 1552トンで、全体の0.29%

 

2010年度(平成22年度) 事業所数17479  届出事業所全体36491の48%

届出排出量 2906トンで全体の0.76%

 

「平成22年度PRTRデータの概要-化学物質の排出量・移動量の集計結果-」より
(平成24年3月、経済産業省製造産業局化学物質管理課・環境省環境保健部環境安全課)

13)燃料小売業の届出排出量・移動量の主な状況
届出排出量・移動量の上位物質は、ノルマル-ヘキサン(当該業種内比率57%)、トルエン(同31%)、ベンゼン(同5.7%)の順で、これら3 物質の届出排出量・移動量の合計は2.7千トンです。それはこの業種の届出排出量・移動量全体の94%に当たり、ほぼ100%大気への排出となっています。この業種の届出事業所数は約1万7 千件あり、届出全体の48%を占めているものの、全業種の届出排出量・移動量に占める割合は、0.76%となっています。
ノルマル-ヘキサン、トルエン、ベンゼンはガソリンの成分として含まれています。