2008年10月 化審法見直し合同委員会報告書()に対する
Tウオッチのパブリックコメント及び回答
 Tウオッチでは化審法見直し合同委員会報告書()に対するパブリックコメントを12 1 日に提出しました。12 22 日にはパブリックコメントに対する回答が発表され、環境省のホームページ(http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=10590)からもダウンロードすることができます。

意見の提出者数は52(うち個人12、団体21、企業18、不明1)で、のべ意見数は254 件だったそうです。

Tウオッチが提出したパブリックコメント及びその回答は以下のとおりです。

1.化学物質の上市後のばく露状況を把握する仕組みの構築(報告書pp.9

(意見)リスク評価のための曝露情報としての製造、輸入量、用途情報の届出は評価できるが、対象物質の範囲を明確にすべきである。また届出情報はPRTR制度と同様に公表すべきである。

(理由)一定数量以上の化学物質の製造・輸入数量、用途情報等を届出る制度を新設するのは賛成するが、市民が理解できるように、どの程度の数量以上を報告させるのか、明らかにすべきである。

その際、CMR物質やナノ物質など届出義務化する数量下限を小さくするなどの方向性を示すべきである。

また化管法で規定されているPRTR制度とリンクし、事業者から届出られた製造・輸入量等についての届出情報は公表する制度とすべきである。そうすれば、PRTR届出対象事業業の未届者の把握も容易になる。さらには、有害性の高い化学物質の使用量の削減と排出量の削減などの化管法の目的が達成できやすくなる。

(回答)スクリーニング評価やリスク評価の方法については、ご指摘のような点も含め、今後、専門家の意見も参考としつつ、検討すべきと考えます。

スクリーニング評価及びリスク評価については、科学的知見に基づいて具体的な判断基準を明示することにより、事業者として、自らの責任において管理すべきリスクの程度が具体化され、そのリスク評価のために必要となるハザード収集も促進されると考えております。なお、リスク評価の実施においては、これまでの審査の手続きも参考とし、化審法見直し合同委員会等において外部専門家の意見を聞くことが想定されます。スクリーニング評価・リスク評価における情報公開については、報告書Ⅲ①第4 段落に追記いたしました。

2.上市後のリスク評価における環境中の残留性の考慮(報告書p.12

(意見)リスク評価するのであれば、良分解性物質もリスク評価し、リスクの高いものは規制対象物質とするべきである。

(理由)化学物質の人及び生態系への影響を最小化するという2020年目標を達成するためにリスクの観点から化学物質を評価、管理するのであれば、難分解性という性質にこだわる必要がないので、良分解性であっても環境蓄積性の高い、リスクの高い物質は規制するような法体系にすべきである。

(回答)良分解性の化学物質をリスク評価の対象とすることについて、化審法見直し合同委員会でも化審法の制定や運用経緯に鑑みて慎重にすべきとの意見もあったことから、報告書(案)では、国は、法目的との関連も含め、引き続き検討を進めることとの結論になっているところです。

3.スクリーニング評価の手順の明記(報告書pp.8-9,別紙2)

(意見)「優先評価物質リスト」のスクリーニング手法が不明である。どのような方法で実施すべきか、手順を明記すべきである。

(理由)優先評価物質をどのように絞り込むのか、スクリーニングの方法を明らかにすべきである。

予想される優先評価物質の数など、実現可能性を示すべきである。参考資料の法規制影響評価で見積もられた必要とされる経費の金額であれば、国民の安全・安心のために5000物質280億円程度の出費でできるのであれば、国費を投じても全ての既存物質のリスク評価をやってもコスト的には安いと思う。

(回答)「1.」の回答に同じ。

4.WSSD 目標を踏まえた化学物質管理(報告書p.7)

(意見)2020年までにリスク評価のサイクルが完結するのか不明なので、根拠を明らかにすべきである。

(理由)WSSD の2020年目標を踏まえて、すべての既存物質、表示物質の安全性評価を実施すべきであり、その実施のための組織や資源についての検討が不十分である。また、有害性のあるものから実施すべきであり、具体的にどういう物質をいつまでに安全性評価するのか。事業者からの有害性情報の提供期限などを明確にすべきである。

今回の報告書では実現可能性の検討ができていないので、検討課題、検討方法などを追加すべきである。

(回答)WSSD 目標を踏まえ、2020 年までの対応の完了を目指すべきとの方向性が示されたものであり、政府として、事業者等の協力を得つつ、計画的にリスク評価等を進めていくことが課題と考えます。

5.今後の課題ナノ物質などの新技術に対する評価(報告書p.p23-24

(意見)ナノ物質などの新技術に対する評価を現行の新規物質として取り扱ってよいのか、検討が不十分である。

(理由)ナノマテリアルの安全性、環境への影響については科学的な知見の蓄積や国際動向を踏まえて、対応策について引き続き検討していくことと課題に挙げているが、日本のナノマテリアルの流通の現状や新規物質としてどの程度登録されているのか現状を明らかにした上で、今後の課題を整理するべきである。委員会としての検討が不十分である。

(回答)ナノマテリアルについては、報告書記載のとおり、今後の科学的な知見の集積や国際的な動向を踏まえ、対応策について引き続き検討していくことが必要と考えます。

6.総合的化学物質管理法制について(報告書p.24)

(意見内容)総合的化学物質管理法制について、今後の検討課題として認識するにとどめず、今回の部分的な化管法見直しにとどめず、化学物質政策基本法の制定をめざして、早急に検討に入るべきであると結論つけること。

(理由)日本における化学物質管理政策の最大の欠陥は、司令塔なき省庁縦割りの法規制にある。例えば、ここ3年来問題になっているアスベスト被害に関しても、1975 年に労働安全衛生法で吹き付け作業を禁止しただけで、アスベストの「管理使用」を認めてきたという総合的戦略の欠如が、被害の拡大や救済の遅れにつながったといえる。

私たち市民団体は、この間、2004 11 月に「化学物質汚染のない地球を求める東京宣言」をまとめ、賛同団体署名を行ってきた。2006 12 月には、「化学物質管理に関する市民からの提案」をまとめ、よりよい化学物質管理政策への転換を提言した。

この間、国際的には2002 年に「2020 年までに化学物質による人の健康と環境に対する悪影響を最小にする」といういわゆるWSSD 2020 年目標が定められ、それに間に合うように、EU では新化学物質管理政策REACH が施行されている。アメリカでもTSCA(有害物質規制法)の大幅改正が目論まれており、国際的にも化学物質管理に関する転換点に来ている。

2006 年末から日本政府は順次、化管法(化学物質排出把握管理促進法)、化審法と化学物質政策の見直しを行っているが、小手先の修正という感がある。今こそ、2020 年目標を達成するために、一元的・総合的な化学物質管理を実現する必要があると考える。

見直し合同会合の一部委員からの少数意見とせずに、今後、早急に検討すべき課題だと結論付けるべきである。

(回答)

ご指摘の、総合化学物質管理法制、化学物質管理政策基本法の必要性は、化審法見直し合同委員会においても様々な議論がありましたが、化審法の見直しを対象とした検討であることを踏まえ、報告書では「今後の検討課題と認識すべき」とされています。