放射能測定活動のまとめ、11年5月〜12年9月 測定検体数867件、セシウム検出率64%
それからこの9月末までに市民や生産者、食品流通事業者からの依頼や、Tウオッチ独自の調査活動によって960検体の測定を実施した。そのうちバックグランド測定やテスト測定、標準検体作成測定などを除く食品や土壌などの測定は867検体となっている。 その測定データを別紙のようにまとめた。以下、測定結果について報告する。 測定検体のうち、測定限界値以下でNDとされたものは312検体で、全体の36%であった。 検出放射能はセシウム134及び137の2核種で、福島原発事故による汚染と判定された最少濃度は、汚染された畑で栽培されたひまわりの額の部分からの2ベクレルで、その他飲料水や農作物などでも2〜3ベクレルの計測値を確認できたことから、測定限界値を2ベクレルに設定し、観測を行った。 セシウム濃度が最大だったものは、福島原発近傍の除染作業で採取された庭土の37万ベクレルで、10万ベクレルを超えて検出されたものは、農地、公園、街路、居住地など、すべて土壌であった。測定開始当初に持ち込まれた土壌で最大のものは、郡山の公園で採取された側溝の土の26万ベクレルであったが、やはり立ち入り禁止周辺の土壌は極めて高い値を示した。畑の土壌で高く出たのは原発からの放射能の雲をまともに受けた地域のものである。 測定した土壌の採取地は岩手県以南から愛知県にまで及んでいるが、多くは東北、関東地区である。216件の測定で、NDわずか3件でほとんど関東以南のものであった。日本海側の地域からの土壌からもセシウムは検出されたが、セシウム134を検出できなかったことから、過去の核実験によってばらまかれたフォールアウト(放射性降下物)の影響が残っていることを感じさせられた。「土壌その他」の項で高い値を示したものは、事故以降手を付けていないプールの汚泥である。 菜の花で高く検出したものは、事故直後の飯館で育てられたものであった。菜種は汚染地域で高い値を示し、セシウムの吸収率が高いと思われるが、しぼった油からは検出していない。 シイタケや山菜類は検体数は少ないが検出率83%で、やはり濃縮する傾向にあることがわかる。 お茶の検出率は88%で、事故直後採取され製茶となった小田原産のものからマスコミで伝えられた静岡産と同様の高い値を示した。事故原発から300キロも離れた地域での汚染であることを考えると、放射能の雲の広がりがいかに広範であったかを示し、茶葉などがセシウムを取り込みやすい傾向にあることもわかった。埼玉県の所沢や狭山産のものも同等の傾向を示している。 果実も検体数は少ないものの、ゆずなどかんきつ類が取り込みやすい傾向にあることがわかった。 穀類ではコメと麦中心180検体近くを測定し、40%がNDとなっている。検体の多くは事故原発から比較的離れた地域で生産されたものである。玄米で高い値を示したものは千葉県内の谷津田で生産されたもので、地形的条件が大きく左右したものとみられた。その他のコメの場合、玄米と白米ではやはり玄米が高めの値を示している。精米した後の糠を測定すると糠に多く残留することから、精白することでかなり濃度を落とせると考えられる。また、稲体も玄米と同等の濃度と同程度と思われた。 出される傾向にあるが、農業用水などの流水からは今のところ検出されていない。しかし、農業用水に溶け込んでいるかもしれないセシウムのレベルから考えて、現在の測定技法では無理があると判断している。今後、山間部の汚染が水に乗って下ってくると予測できることから、継続した観察と測定手法の検討が必要と思えた。 農産物の内、豆類は検出率が高く、大豆の検出率は82%で濃度も高くなる傾向が感じられた。 芋類の検出率は約3割で、じゃがいもとさつまいもが比較的取り込みやすいと感じた。 野菜類は検出率27%で濃度もそれほど高いものはなかった。高めに出たものはエゴマなど2〜3点でおおむね10ベクレル程度であった。 肉や魚については測定件数がわずかなためはっきりしないが、鶏肉で検出している。餌による影響が現れると感じた。 卵も汚染地域でのひら飼いの場合、検出する傾向にあると思われるが数ベクレルである。 地域別のデータ解析ができていないので、事故原発からの距離や放射能の雲の流れとの関係など定かではないが、田畑の土壌汚染と農作物への取り込み等、今後、検討課題である。(Tウオッチ理事:井上啓) |