報告
環境省環境保健部環境安全課 技官 吉崎仁志さん 経済産業省化学物質管理課 課長補佐 村越正毅さん
質疑応答
質問1: PRTRの届出対象外となる中小企業が多いが、その点をどう考えているのか。村越氏: 届出対象外となる従業員21人以下の裾切事業所については、国が推計を行っている。
質問2: まず、昨年度に比べ排出量が10%程度減ったことについて、企業努力をした結果と見ているか。あるいは、別の要因と考えているか。また、届出外排出量の推計方法・項目の変更があったためにデータの経年比較できないというコメントは、おかしいのではないか。たとえば、やり直した推計方法で昨年の数値もやり直せば経年での傾向が見えるようになる。最初から比較することをあきらめているのは好ましくない。最後に、昨年同様にデータの分析結果を報告書にまとめる予定はあるか? 村越氏: 移動・排出量が増加している企業には個別に話を聞いているが。それぞれの企業が計算の仕方を見直すなど、精度が向上している。全体として、企業が努力していると考えている。報告書の冊子は既に印刷しているのでお渡しできる。届出対象外の数値について、変更した基準で前年度分の推計を全部やり直すのは、かなりのコストがかかると思われる。まだ推計方法も安定しておらず、もう少し時間をいただきたいと思っている。ただ、計算方法の変更などについては、すべてホームページに開示するなど、精一杯できることはやっている。 吉崎氏: 届出外排出量の比較については、環境省としては難しいと考えている。これまで推計していなかった製品を対象に含めるようになったなどの変更があり、現段階で単純に比較をしても、意味があるとは考えられないからだ。今後は推計方法について、そういった大きな変化がなくなり、比較できるようになると思われる。
質問3: 平成14年度のPRTRデータについて、地域レベルでの何か特徴はあったか?地方自治体や市民による取組みに役立てるためには、非点源の情報が重要だ。全部の推計をやり直し比較することが無理だとしても、日常生活に関わりの深いものだけでも、選んで比較をしてもらいたい。また、化学物質のリスクは量だけで判断できないないと強調されているが、毒性の評価について具体的に何か考えているか。 吉崎氏:地域レベルについてもホームページで公表している。PRTRのデータを理解していただくために、市民の皆さんに提供する情報として、プレスリリースだけでは十分でなく、市民の皆さんが関心を持っていると思われる点について中心的に取り上げるということは、今後のリスクコミュニケーションでも取り組むという検討をしたい。毒性の評価については、科学的知見の蓄積に取り組んでおり、将来的に役立てていきたい。
質問4: 輸送用機械器具製造業の排出が減ってはいるものの、まだ多い。欧州では日本よりも取組みが進んでいると聞いている。日本の産業がもっと排出削減に取り組むインセンティブをどのように考えているか。 村越氏: 中堅以上の企業では、乾いた雑巾を絞るような努力をしている。化学企業では大手を中心に早くからレスポンシブルケア協会など100社以上が所属し取組みをしている。自動車業界についても一昨年と昨年ではまったく態度が変わった。大手企業が関連企業に塗料の変更などを働きかけている。大気汚染防止法の改正で、VOCも規制対象に含まれるようになるので、それも影響があるだろう。日本の自動車産業が、ヨーロッパに比べて取組みが遅れているということは決してない。インセンティブとしては、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)を通じた技術開発の推進を大きくしていく予定だ。またPRTR制度そのものが、産業界に程度のプレッシャーとなっていることがわかっている。
質問5:PRTR制度の意義として、「環境保全対策の効果・進捗状況の把握」とあるが、これをちゃんと分かるような形でPRしてほしい。また国の政策に、具体的に新たな取組みがあれば、教えて欲しい。 吉崎氏: 化学物質による汚染実態調査の対象物質の決定にPRTRデータを活用している。PRTR制度によりどのような効果があったのかについてPRしていきたいと考えている。
村越氏: これほどの膨大な化学物質のデータが出たのは初めてで、経済産業省としてもやりたいことはたくさんあり、優先順位を付けて、どう使っていこうか考えている。法律の目的である自主管理の推進のためにも、産業界に働きかけを行っており、かなりの成果があると考えている。
質問6:データの信頼性、たしからしさをどのように検証する方法を教えて欲しい。先ほど、面接をしているという話があったが、他には何をしているのか。(質問7とまとめて回答あり。) 質問7:商品の成分表示を見ても、どの物質がPRTRの対象になっているのかがわからない。たとえば「ファブリーズ」には成分としてどのような化学物質が入っているのかさえわからない。一般の市民がわかるように、表示の制度を整えてほしい。 村越氏:データの信頼性の確保については、人海戦術で行っている。まずは都道府県の段階で形式的にチェックしている。それを所管大臣にとどけ、内容のチェックを行う。ここでは、それぞれの物質についてのチェック項目を用意し、企業を退職した専門家等がチェックしている。単位を間違えている企業もある。昨年度では6000件ぐらいの点について、個別にデータの確認を行った。そして最後に経済産業省では、前年度のデータとの比較をして、100倍とか1000倍違っていないかなど、三重のチェックを行っている。 製品の表示については、法律の目的が事業者による化学物質管理であり、PRTR法では限界がある。ただし、2020年までには、製品中の化学物質を管理することも目標にはいっているので、これからの取組みであることを理解して、もう少し待ってほしい。
|