2003年11月15日 地域セミナー in 札幌 
 
◇PRTR 制度の概要とTウオッチの取り組み Tウオッチ 藤原 寿和
◇地域におけるPRTRの取り組み 市民ネットワーク北海道・
 シックスクールプロジェクト 石川 佐和子
◇行政の取り組み〜北海道におけるPRTR の現状
 北海道環境生活部環境室環境保全課主幹 武田 義
◇北海道大学におけるPRTR 制度の取り組みと制度運用の課題
 北海道大学環境保全センター 江見 清次郎
◇報告者と参加者によるパネルディスカッション
 
 

地域セミナー IN 札幌


1. PRTR 制度の概要とTウオッチの取り組み

Tウオッチ 藤原 寿和

2. 地域におけるPRTRの取り組み

市民ネットワーク北海道シックスクールプロジェクト石川 佐和子

市民ネットワーク北海道がシックスクール問題に取り組むようになったきっかけは、道立高校で有機リン系薬剤散布がビル管理法に基づいて行われていた実態を知ったこと。北海道教育庁に対して薬剤散布中止を求める緊急要望を実施。その結果、2001年1月から薬剤散布は完全に中止された。
札幌市では、シックスクールへの本格的な対応が始まったのは、2001年度から。学校建築に際して、例えば、合板はホルムアルデヒドの放散量がもっとも少ないもの、接着剤はホルマリンを含まないもの、塗料は有機溶剤の含有の少ないものなどの特記仕様書に基づいている。
この仕様に基づいてモデル校として建てられた旭丘高校が、入って1ヶ月経って3人の生徒に頭痛、吐き気などの症状が発現。うち2人は化学物質過敏症と診断された。市教委の発表は2人だが、実際に病院にかかっていたのは10人以上ということも判明した。
札幌市に対して要望や質問書を数回提出、MSDSも取り寄せて有機溶剤が5〜15%も含まれていることも分かった。しかし、専門用語が羅列されていて、一市民にとってはどれくらいの毒性があるものなのかが分からない。市民にとって分かりやすいMSDSが必要だと思った。
PRTRを利用するにあたっては、市民にも分かりやすい書き方、解説をつけていただければ、もっと利用が広がるのではないかと思う。札幌市では、夏休みに築20年以内の77校のシックハウス検査を実施。その結果、45校で国の基準を超えるホルムアルデヒド、トルエンが検出された。市民ネットでは、子ども達の健康調査をこまめにするよう議会等で働きかけている。

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3. 行政の取り組み〜北海道におけるPRTR の現状

北海道環境生活部環境室環境保全課大気環境グループ主幹(大気環境G)武田 義

北海道の今年度公表分としては、39業種、1962事業所から届出があった。主な業種は、燃料小売業、下水道業、一般廃棄物処理業であり、この3業種で82%を占めている。排出量総量は8,349トン、移動量総量は1,260トン。埋め立てが56%と半分以上、次には大気への排出が続く。
物質としては、砒素及びその無機化合物が半分近くを占め、トルエン、鉛及びその化合物、キシレン、クロロメタンが続く。砒素及びその無機化合物、鉛及びその化合物については、主に金属鉱業に由来する鉱さい等の残さを事業所内で埋め立て処分しているものである。

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4. 北海道大学におけるPRTR 制度の取り組みと制度運用の課題

北海道大学環境保全センター 江見 清次郎

北海道大学では、化学物質の管理をする決まった部署が無い。環境保全センターは、実験の廃液を処理するのが一番大きな仕事。下水の化学物質検査、不要になった薬品類の処理など関連した仕事もやってきた。
PRTR法ができた時点で、センターがPRTRへ対応を担当することになった。平成13年3月から予備調査を進め、13年度に本調査に取りかかった。
「北海道大学特定化学物質調査要項」を作成し、それに基づいて調査した。
取り扱い量の多い8物質についてはすべての研究室、それ以外のものについては各研究室で年間500g以上購入する物質について調査した。調査項目は、在庫量、購入量、取扱量、環境保全センターへの排出量、処理業者への処理委託量、大気への排出量及び下水道への移動量。
結果は、特定化学物質のうち取り扱っていたのは、3分の1の118種類。購入量の合計は18,214kgで、取り扱い量の合計はその95%の17,347kgであった。クロロホルム6トン強、ジクロロメタン4トン、ホルムアルデヒド2トン強、アセトニトリル、トルエン、ベンゼンの順に多かった。
排出・移動先では、環境保全センター経由での外部の処理業者への移動量が77%、処理業者への直接の移動量が9.6%、大気への排出量が2.8%、下水への移動量が1.4%などとなっている。
学部毎の届出としたところ、届出下限値の取扱量5トン以上に該当する物質はなかった。ただし、ダイオキシンについては、該当したので排出・移動量を届け出た。
札幌市では、平成15年2月に「札幌市生活環境の確保に関する条例」ができた。66物質、年間取扱量100kg以上が対象で、条例が実施されると届出対象物質がPRTR届出よりも大幅に増える見込み。
また、15年度からは、取扱量1トン以上が対象となるので、届出対象となる部局が出てくると予想される。

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5. 報告者と参加者によるパネルディスカッション

Q: 合成洗剤とPRTR法との関わりについて知りたい。対象となる有害物質354物質の中には、合成界面活性剤が含まれていると思うが、国はこれまで環境保全上、合成界面活性剤に特に問題は認められないとしてきた。それとの関係はどう考えたらいいのか。

藤原: 対象となる合成界面活性剤は8物質ある。そのうちLASは排出量の上位を占めている。しかし、河川への影響や取り扱っている人間の健康への影響等については、PRTR法だけでは読み取ることはできない。合成界面活性剤については、PRTR法で初めて生態系への影響が認められて対象物質に入った。しかし、未だ十分に影響が解明されているわけではないので、今後、解明されていけばPRTR法でのデータが有効になってくると思う。

Q: 札幌市では条例で小規模事業者にも報告を求める国よりも厳しい制度を設けたり、国ではPCBの処理計画が決まったとか、改正化審法が動き出すなど、化学物質対策が進んできていることを感じている。他にももっと色々な問題があるということがあれば、教えてほしい。

藤原: 以前に比べれば進んできていると思う。しかし、これらの動きはEUなど海外の動きに押されてやっとというところ。量反応関係に基づく、発がん性を重視するなどのこれまでの毒性学を見直す必要があると思う。内分泌かく乱物質については、もちろん未だ分からない部分も大きいが、かなり低濃度のところで影響が出ることが分かってきた。化学物質過敏症のように、一度感作すると、極めて微量でも症状が出てくるなどということがある。これまでの濃度基準でいいのか、複合汚染についても考えていかなくてはならないと思う。

竹田: ゴルフ場の農薬について長年調べているが、最近では農薬使用量が大幅に減って(ここ数年は約4分の1で横ばい)、ほとんど検出されなくなってきている。
最近問題になっているのは、農村部における肥料による(亜)硝酸性窒素の地下水汚染である。肥料の過剰投与、家畜排泄物の不適正処理が原因と見られている。
A(江見)化学物質がどのように使われているのかについては、大学を含めて不明確な所が多かった。PRTR制度によって実態をつかむことができるのではないか。
札幌市の条例によって、少量取り扱い、小規模事業所についても報告義務が生じるので、かなりつかめるのではないかと思う。
PRTR以外に、化学物質の管理マニュアルも義務付けられるので、管理についてはやっていかなくてはならない状況になってきている。北大では、有機溶剤使用がこの20数年の間に10倍以上増加している状況があり、削減していかなくてはならない。
また、来年度から大学の法人化に伴い、労働安全衛生法が適用される。それによって、化学物質についても規制が厳しくなるので、削減の方向へ向かう状況にある。

Q: 家の近くに大きな廃棄物焼却施設があるが、ダイオキシンの排出量はどのようにして調べるのか。

竹田: 立ち入り検査で直接測定している。データは道に対して開示請求すれば入手できる。違反事業所については、公表している。

藤原: 排出インベントリーについては、実際に測定した濃度データを基に排ガス量をかけて年間排出量を出す。

Q: ブックレットに「日本でも地域で独自のPRTR制度を作ることを禁止していません」として、東京都、埼玉県、川崎市などが環境保全条例でPRTR制度的な仕組みを取り入れていると書いてあるが。もう少し、詳しく聞かせてほしい。

藤原: 東京都の場合は、環境確保条例で国のPRTR制度の横出しのような形で、対象物質は354物質にプラスして、使用量も報告対象となっている。
PRTRの対象となっていない過フッ素化合物など家庭用品の中に含まれる化学物質についても、非点源の対象物質として入れるべきではないかと考えている。

石川: 今日の話を聞いて、Tウオッチのホームページを使いこなしていけそうと思った。ホームページにアクセスして情報を得て、活動に役立てていきたい。