2003年4月5日 国のPRTR情報公開をどう見るか
 
 

1. PRTR制度の概要、データ発表までの経緯

経済産業省製造産業局化学物質管理課 村越正毅さん

 個々の化学物質を個別の法律で規制するという従来の手法では、規制に時間と手間がかかるので、多くの化学物質を視野に入れながら、事業所による自主的な排出抑制努力を発現させるというのがPRTRの新しい点だ。特定の化学物質だけを視野にいれるものではない。大きな枠組みで全ての化学物質を念頭に入れる。ハザードは分かるが、リスクが分からないものなどを対象する。事業所が排出量、移動量を把握して都道府県経由で国へ届出て、国が集計して公表するというのが枠組みだ。MSDS(化学物質等安全データシート)を化学物質を使用する事業者へ提供することも法律のもう一つの柱となっている。事業規模として常用雇用者数21人未満、年間取扱量5トン未満の事業所や家庭等からの排出について国が推計する。集計されたデータの元となっている個別事業所データについては開示請求を行うことができる制度となっており、開示請求は郵送でも受け付けている。

 対象物質の見直しは今後の課題だが、今は届出と集計が終り、その精度を高めることに傾注している段階だ。発がん性物質12は、特定第一種対象化学物質として製品含有率0.1%(第1種指定化学物質は1%)を届出対象とするなど厳しい扱いにしている。排出量というのは、大気、公共用水域、事業所内の土壌、埋立てであり、移動量というのは、下水道と、事業所外への廃棄物としての移動量だ。算出方法としては、物質収支、実測値、排出係数、物性値を用いる方法などがある。今回の届出は常用雇用者数21人以上、年間取扱量5トン以上を対象として、3.5万件が出された。推計の対象は、届出対象外、非対象業種、家庭、移動体からのもので、推計方法については、今後意見を聞いて精度を高めていきたい。

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2.データ発表までの過程でわかったこと

経済産業省製造産業局化学物質管理課 村越正毅さん

 平成11年7月に法律が施行され、対象事業所の要件、対象物質の選定等政省令を整備し、平成13年度に事業所が把握した排出量等を14年6月までに届出させ、その集計結果を今年3年に発表した。また、今年4月から6月末までの期間で14年分の届出が開始されている。来年の届出から年間取扱量が1トンと裾切りが下がるので、商工会議所、中小企業中央会などを通じて49万事業所にパンレットを配布した。

 3.5万件分の届出データは、アルバイト40名、延べ2600人日で集計した。届出形態は、93%は紙で提出、磁気ディスクは6%、電子は1%だった。電子というのはダイヤルアップで独立行政法人製品評価技術基盤機構との電話回線によるものだった。電子での届出を増加させるために、今年4月からはインターネット方式で簡単に電子で届出できるよう改善した。届出されたデータのチェックは、届け出先の都道府県、業種を所管している大臣のところ、とりまとめである経産省と環境省、という3段階でチェックを行なったので手間がかかった。これらのチェックにより、ふりがなが落ちている、単位、桁数のまちがいなどを含めて6.4万箇所の修正点があり、変更届出を行った件数はは800件あった。

 平成13年から独立行政法人製品評価技術基盤機構にPRTR制度に対する窓口としてサポートセンターを設置し、届出までに1400件の質問を受けた。14年に入ってからは質問は700件に減った。これまでの経過で分かったこととして、集計結果をまとめた報告書で、業種ごとに、どのような取扱工程から化学物質が排出されているかを記述した。これらについて充実していきたい。NEDOによる化学物質管理についてのセミナーも開いている。  企業も届出するのに精一杯で、化学物質管理について十分に対応し切れていないケースもあるようだ。経産省としても、化学物質管理指針に基づいて対策をウオッチしていかなかといけない。第1回の集計・公表に向けて届出漏れ、集計・公表作業で手いっぱいで、直近での排出抑制対策の啓発に手がかけられなかったのが実情だ。それが反省点で、今後の課題となる。

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3.PRTRデータの概要と解説

環境省環境保健部環境安全課 福島健彦さん

 アウトラインと、データをみる際の注意点について触れたい。「PRTRデータの概要」、「届出外排出量の推計方法等の概要」の冊子はホームページで見られるようになっていて、そこに概要や集計表も出ている。事業所からの届出と、推計したものをあわせたものがPRTRのデータとなる。

 PRTRデータの性格と取扱い上の留意点としては、精度に保留がつく限界のある数字だということだ。すべての業種の事業所が対象ではないし、対象業種の事業所にも取扱量、人数で裾切りがあって、全部を網羅しているわけではない。届出の数字も、事業者により計算方法が様々で、精度には一定の限界がある。届出外の推計も、現時点で得られた最大限のデータで推計しているが、データがなくて推計できなかったものも多いし、推計したものについても実測データが限られているなどの理由で精度には一定の限界がある。例えば、自動車排ガスの推計では、新車すべての排ガスを調べているわけではなく、10台20台の測定データで全体を代表させているし、走行量も実測ではなく道路交通センサス等の数字を使って推計している。

 届出は34830事業所からで、一番多かったのが燃料小売業の18634、次が製造業で10821、うち化学工業が2087、下水道1458、一般廃棄物処理業1919というのが業種別で件数が多いものだ。都道府県別では、愛知、北海道、大阪府、神奈川県、兵庫県、少ないのは沖縄の128件だ。

 届出の数字のうち、排出量は環境中へ出るもの、移動量は廃棄物として産廃業者へ渡されるか、下水へ出て下水処理場で処理されるものを表わす。事業所からの排出量・移動量を合わせると、排出量が314千トンで58%、大気への排出が多くて281千トン。移動は223千トンで42%。 物質別の届出排出量・移動量は、量的にはトルエン、キシレン、塩化メチレンの順となる。

 業種別の届出排出量・移動量は、製造業が97%、そのうちでは化学工業が一位。届出排出量のみでは輸送用機械器具製造業(自動車等)が一位。化学工業は移動量が多く、輸送用機械器具製造業は排出量が多い。輸送用機械器具製造業ではトルエン、キシレン等の塗料の溶剤が多く、次いで部品洗浄に使う塩化メチレンが多い。化学工業でもトルエン、キシレンが多い。

 届出外排出量では、小規模事業者など、対象業種からの届出外排出量が55%を占める。それ以外では非対象業種や家庭で用いられる農薬、塗料、洗浄剤や、移動体の自動車などの排出が多い。対象業種からの届出外排出量は塩化メチレン、トリクロロエチレンなどが多い。非対象業種からは接着剤・塗料などに含まれるキシレン、トルエンが多い。家庭からは洗浄剤などに界面活性剤として含まれる直鎖アルキルベンゼンスルホン酸や防虫剤・消臭剤に用いられるパラジクロロベンゼン。移動体では自動車が65%を占める。ホルムアルデヒドなどエンジンの燃焼で生成される物質や、燃料に含まれる物質が多い。

 届出と届出外の排出量の合計が環境中に出るもので、届出はそのうちの35%を占める。移動量は事業者から直接環境中に出るものではない。全部の発生源、全部の物質を網羅していないので、これらの数字の精度には限界がある。あくまでも現時点での知見での数字だということに留意して欲しい。

 都道府県別では、届出排出量・届出外排出量を合わせると、愛知、東京都、大阪府の順となる。 届出は愛知が一位。届出外のうち、対象業種の届出外、非対象、移動体では東京都が一位。家庭は愛知が一位。地図でみても、人口が多い、あるいは産業が多い太平洋側が多いことがわかる。

 個々の物質では、届出・届出外合わせてトルエン、キシレン、塩化メチレンの順で、塗料や排ガスに含まれている。

 発ガン性のある特定第一種指定化学物質12物質は別に集計している。届出と移動では排出量52%、移動48%、うち廃棄物としての移動が47%。排出のうち埋立てが多いのは、砒素などが金属鉱山での埋め戻しされている中に含まれているものだ。届出と届出外の合計では、ベンゼン、砒素が多い。他の普通の物質よりは移動が多い傾向がある。

 この公表データは排出量・移動量の集計であって、環境中で人や動物が曝露される量ではない。量の大小がリスクの大小を表わすものではない。曝露評価や個々の物質の有害性評価をしないと、リスクの評価や、講ずべき対策を議論することはできない。この数字そのものではどうこう言えないが、このデータを出発点として環境中での実地の計測をしたり、詳細な曝露評価、リスク評価をした上で対策を講じていこうと考えている。

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4.PRTRデータの今後の政策への活用について

経済産業省製造産業局化学物質管理課 村越正毅さん

 NEDOでは大学、企業、NGOなど多方面から、PRTRデータの見方について意見をうかがう機会をつくる予定だ。規制法は規正法で規制をしていくが、規正法で今まで把握していた数字とPRTRで出てきた数字をつきあわせてみる必要がある。企業が自主管理をしていくのにも指標が必要だ。有害大気汚染物質の自主管理計画が平成9年から始まっている。ベンゼン、トリクロロエチレンなど12物質が対象で、業種ごとに目標を作ってかなり排出抑制されてきた。どこまで排出抑制を実施するかが問題であり、自主管理を行っている事業者からも課題として挙げられている。自主管理指標が必要となっていることを実感している。環境基準が策定されているベンゼンについては、汚染が高いところで地域ごとに管理計画を作って排出抑制を実施している。

 個々の法律での規制にも、自主管理のための指標作りにも活かせる。自主管理は、科学的知見の充実などの新しい考え方をもとに進められている。ヨハネスブルクサミットでは、2020年までに化学物質の悪影響を最小化する方法での使用を達成する、という新しい目標が上がった。PRTRデータは、環境リスク評価のため、曝露評価を判断する元になり、一部の化学物質については曝露量の推計にとりかかっている。曝露情報の収集、曝露シナリオ作成から、人への影響を定量的にわかるようにするリスク評価手法等について「化学物質総合評価管理プログラム」として開発を目指している。これにより、自主管理を進める上での、具体的な指針を示すことができるようになる。他のPRTRデータの使い方として、移動量を廃棄物の観点で分析したらどうなるか、などが考えられる。企業ではとりあえず、同業他社との比較、他業種との比較などにとりかかっており、自主管理を進めるための指標となっていくものと思う。他の活用方法としてどんな視点があるか、お知恵拝借したい。

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5.環境省におけるPRTRデータの活用について

環境省環境保健部環境安全課 福島健彦さん

 今、環境省の中で、PRTRデータを各部署が検討している。それをもとに具体的な施策を行なうことになる。PRTR法は事業者による自主管理の促進、環境保全上の支障の未然防止を目的としているが、環境省としては、PRTRデータを活用して、今後、対策の優先度が高い物質をランキングしてリスク評価を行ない、既存の対策を見直して、規制的措置を講じたり、事業者への情報提供などの非規制的措置を講じる。

 具体的には、黒本調査(化学物質環境汚染実態調査)、各種の存在状況調査などの対象物質の選定にPRTRデータを使い、大気、水の濃度を計測する。リスク評価の対象物質の選定や、その物質のリスク評価のための暴露評価にPRTRデータを使う。また、PRTRデータを利用して、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、廃棄物処理法の物質リストの追加や見直しを行う。これらの取組にあたっては、環境保健部が規制担当部署と連携して化学物質環境リスク低減プランを策定し、全体として整合を取りながら対策を進める。  また、リスクコミュニケーションの一環として、「化学物質と環境円卓会議」を開催し、また、化学物質アドバイザーのパイロット事業を始めた。第1回公表を踏まえた、PRTRデータの市民ガイドブックの新版も近く出す予定だ。

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6.Tウオッチで提供するPRTR情報

  有害化学物質削減ネットワーク 槌田博

 国のデータ公表を受けて、ウエブでの情報提供にとりかっている。公表された事業所の個別データをデータベースで検索できるようにする。エコケミストリー研究会のサイトと相互にリンクして共同して情報提供していけるようにする。データを見て問題意識をもって。それを解決していく場がTウオッチだ。すでに課題をもっている人はすぐTウオッチにきてもらって検索してもらえばいい。とりあえずどんなものかみたいという人はエコケミのホームページをみてもらう。 どんなことが検索できるかというと、会社、事業所、物質からできるようにする。他にも商品からさがす、ということもできるようにしたい。日常使う商品からライフスタイルをかえていくことにつながる。物質名だけではわかりにくいので、農薬などのジャンル分けてしてそこから絞り込めるようにする。、地域の住所、扱っている化学物質からも事業所データが検索できるようにする。事業所や企業の排出量ランキングをするのは簡単だが当初はしない方針だ。データの数字の限界があり、低めに出した会社もあるだろうし、多い所はむしろ正直に届け出ているとも考えられる。Tウオッチのホームページでは、自分の持っている問題点を解決できる場としたい。近所の工場がどんなものか検索し、その結果を企業や事業所ごとにコメントを書き込めるようにする。それが掲示板機能となってディスカッションが始まる。そういう場にしたい。

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7.エコケミストリー研究会で提供するPRTR情報

エコケミストリー研究会 加藤みかさん

 研究会としてはホームページで毒性情報などを提供している。PRTRについてホームページで情報提供を予定している。国から公開されるデータは基礎情報で、それを理解して活用できるようにすることで、リスクコミュニケーションの推進につながる。

 市区町村のような身近な地域や、人の健康や生態系についての情報を、だれでもリスク削減のために活用できるように提供していきたい。都道府県別、市区町村別の地域情報、物質排出情報、人や野生動物への影響をの程度を表わしたリスクスコアを提供する。個々の物質の毒性の強さや性質、事業者が自主的に環境管理するための環境濃度も算出する。

 農薬は使用量からの推計なので他と区別している。点源の3.5万箇所を市区町村別に住所から割り振る。自動車排ガスや家庭からの排出量について、人口、世帯数などで市区町村別に配分する。全体量だけでなく、可住地面積で割って、排出、使用の地域密度を出す。これによって被害の可能性がわかる。排出リスクスコアは、大気、水域、水域の生物について算出する。

 物質ごとに規制濃度や、それがないものは国際的ガイドラインや物性から計算して、一生曝露しても害がない濃度、環境管理目標濃度から地域ごとの毒性スコア係数を出す。 地域の排出リスクスコアは、グラフや地図で表わす。発がん性があるものも別に出している。このような地図や表が8.5万枚にもなる。これを5月中旬からホームページで公開する。毒性スコア係数で、地域の排出リスクスコアへの寄与をみると、排出量の多さとリスクとは異なる。これを地域ごとに地図や表で表わして、地域での対策すべき物質が目に見えるようにしたい。地域の個別事業所のデータはTウオッチへリンクしている。

 5月22日にはシンポも行なう予定となっている。

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8.質疑応答

Q: ジクロロメタンを塩化メチレンとしたのはなぜか。混乱がおきる。

A(環境省 福島):
農薬など別名の方が分かりやすい物質が多いので、別名がある物質は別名で表記するよう統一した。ジクロロメタンも機械的に別名の塩化メチレンとした。来年度以降の表記は考えたい。

Q: ガソリンスタンドが多かったのというが、予想できたのではないか。 ガソリンスタンドでは、青森で排出量が多いのはエチレングリコール。これは不凍液を敷地内に埋めたので、正直に申告したとは言えるが、問題ではないか。

A(経産省 村越):  
事前の取扱量調査で1.7万件と予測した。予想が外れたのはガソリンスタンド、廃棄物処理業、下水道で、あとはほぼ当たった。ガソリンスタンドは、事業者が事業所をかなり個別にもっていたということだろう。廃棄物と下水については知見が足りなかった。

Q: 二硫化炭素が年間7000トンで、大垣のある工場が2900トンと4割を排出している。チェックもれではないか。

A(経産省 村越):  
二硫化炭素はわからない。業界・企業においては開示請求して数字を分析していて、今後おかしいと思われる数字は出てくると思う。来年以降の反省材料としたい。

Q: 環境省がわかりやすい形で公表を予定しているというのは。

A(環境省 福島):  
(本日説明したデータ活用の資料は12月作成の文書なので)今回の公表がそれに当たる。第二弾としてはPRTRデータの市民ガイドブックとして近日中に公表したい。今回の公表では、ホームページでできるだけわかりやすい公表を行った。データの概要、推計方法などが出ていて、キーワードで簡単な検索はできる。また、対象物質データベースで物質検索ができる。要望があれば、ホームページの改良もしていきたい。

Q: 事業所と廃棄物処理業者との間で動くのは移動量、廃棄物処理業者が埋立てると排出量になると思うが、物質としては同じものが別々にカウントされていると考えてよいか。

A そのとおり。

Q 事業所から商品として出て家庭に行って、使ってゴミになったものが最終的に焼却場にいくと思うが、家庭から出るゴミは排出量にカウントされるのか。

A(環境省 福島):  
考え方としては移動量に当たるが、法令上、推計の対象になっていない。事業者からの移動量のうち届出された以外のものも、法令上は推計の対象ではない。

Q 届出以外の推計で家庭からというのはなにか。

A(環境省 福島):  
環境中への排出量だ。家庭から出るゴミや下水に含まれての移動量は、法令上は推計の対象ではない。環境へのインパクトを見る上では届出排出量と届出外排出量、事業所から何が出ているかは届出排出量・移動量をみればよい。マテリアルフローを見るには届出外の移動量の推計があった方がいいが、PRTR法の目的の外の話であり、法律の仕組からは抜けている。推計が技術的に困難ということもある。下水に流れ込む合成洗剤などの移動量は推計できるので参考資料的にホームページに乗せている。

Q 事業者が自ら、提出した数字のまちがいに気が付いて報告を出したとすると、その訂正はどの時点で反映されるのか。

A(経産省 村越):  
集計作業中にもまちがいはあった。公表後の訂正は、しかるべきタイミングで変えないといけないと考えている。

A(環境省 福島):  
ある時点で個別事業所データを修正する予定だ。時期や方法等は事業者からのまちがいの報告の様子をみて判断する。

Q 環境カウンセラーをしている。 (1)届出義務があるのに届けていない事業者数は推計しているか。企業秘密はどうなのか。 (2)345物質を選んだ根拠を明確化してほしい。今まででも規制する法律はある。リスク評価のデータはあるのか。 (3)出ている量と環境基準とはどうつながるのか。 (4)自主管理基準を策定するというが、中小企業にとってむずかしい。ファシリテーターとしてどう対応するか。中小企業が市民にうまく説明できるか。

A(環境省 福島):  
(1)義務があるのに届けていない事業者数は正直わからない。届出義務は取扱量によるが、取扱量は外からではわからない。条例に基づきより少ない取扱量の事業者にも独自に届出させている東京都の担当者にデータ提供を要請しており、それらのデータも参考に勉強していきたい。

(2)環境省のホームページに物質選定時の審議会答申がのっている。文献調査や海外の規制で一定の毒性があるものをピックアップし、製造・輸入量や環境中での検出状況を調べて決めている。中小企業としては従来からの規制物質だけでも大変なところに、新たにPRTRの対象物質数が多くて現場で苦労されているのは申し訳ないが、PRTRで数多くの物質を把握しておくと、それが排出量や環境リスクの削減や周辺住民とのコミュニケーションなどの新たな取組にもつながる。なお、諸外国と比べて、特に物質数が多すぎるということはない。

A(経産省 村越):  
(1)企業秘密請求は一件もなかった。基準は厳しい。

(2)化学物質を取り扱う文化が変わったということを意識して欲しい。化学物質管理指針に一律にこの様な対策を実施すべしとは定めていない。例えばまず洗浄装置に蓋をすることから始めて、次の段階として洗浄槽の温度管理をすれば、それだけでも大部排出量が抑制できる。できることからやるということで、高価な設備投資をしろということではない。当たり前に化学物質を管理する習慣をつけないと、いつまでも苦痛になる。中小企業には、やれることからやって欲しいということで厳しいとは思っていない。レベルがあがるほど、やれることは精緻になる。のんびりゆっくりしているとここで説明があったようにNGOから指摘される。新しい文化を作ろうということで、国から言われてどうということではなくて、社会全体が事業者を見ていると考えて欲しい。

A(環境省 福島):  
(2)(3)環境基準がない物質がほとんどなので、環境基準や規制値とはちがう、リスク評価による物差しが必要だ。濃度予測、曝露評価などを行うリスク評価支援プログラムを作成している。

A(経産省 村越):  
一事業所から出ている排出量を大気汚染濃度に換算するシミュレーションソフトを、日本化学工業協会で無料で提供している。

Q 電磁波の被害者だが、体への有害物質の取り込みにも関係している。除外されているのは問題だ。

Q オランダでは対象物質になっているNOxを対象に入れて発生源の排出マップを作って欲しい。市民による簡易測定する運動をしている。発生源の発生量と環境濃度を調べることをやって欲しい。温暖化問題でもNOxを測ったら化石燃料からの発生源がわかる。温暖化防止の対策も立てられる。ダイオキシンの簡易測定でも、有機塩素化合物を無機の塩素でやると簡易に測定できる。蓄積量と排出量両方が問題だ。簡易測定が可能な物質は、教育的な意味で推進してくことをやって欲しい。杉並病の例のように、排出されたものが環境中で変わって被害を出す。そういうことも考えて欲しい。

Q 石綿は年間輸入量が8万トン、排出が4000トンしか把握されていない。推計の改善が必要ではないか。相模鉄道が3000トン出しているというのが、データとして突出している。

A(環境省 福島):  
対象物質は、国によってちがう。政策ニーズがちがうからだ。オランダは事業所の設置の環境アセス的な使い方などをしているのでNOxが入っている。わが国では化学物質の人や生態系への影響ということで法律が組み立てられている。NOxや温室効果ガスは大気汚染防止法、温暖化防止法のような他の法律で取り組んでいる。法律の目的と方向性がちがうので、日本のPRTRではNOxや温室効果ガスはとりあつかっていない。なお、一般論として、PRTR法には見直し規定があり、化学物質の追加拡大は今後ありうる。

石綿は、現時点で把握できる排出量は今の数字になる。基本的には廃棄物としての移動の届出がほとんどだ。環境への負荷では、古い建築物の取り壊しの時の届出外排出量の推計を考えないといけないが、現時点では推計に使えるデータがなくて把握がむずかしい。時間をかけて勉強していきたい。

Q  大気汚染防止法では発生源を公表しない。だからPRTRで発生源がでるなら、ここに入れたらいい。

A(Tウオッチ 中地)  
NOx、SOxはTウオッチとして今後議論していきたい。

以上

この連続学習会は、平成14年度環境事業団地球環境基金の助成を受けています。