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■署名趣旨説明

 

 医薬品・農薬から、合成洗剤、プラスチック、食品添加物まで、今や私たちの身の回りには多種多様な化学物質が溢れています。これらの化学物質の中には、人の健康や生態系を害するものも少なくありません。このため、過去、水俣病、スモン病、カネミ油症など数々の公害・薬害事件が発生しました。その後、化学物質審査規制法、化学物質管理促進法などの化学物質管理のための法律が制定されましたが、これらは領域・用途別の省庁縦割りの制度となっており、これらを統合し、一元的に管理するしくみは未だ整備されていません。

 

  このため、化学物質対策は、各省庁によりまちまちで、規制にすき間が生じることもあります。例えば、農薬取締法(農水省)は農薬の登録や販売・使用を規制していますが、農作物の防除にしか適用がないため、家庭用殺虫剤などは対象外となっています。家庭用殺虫剤のうち、ハエ・蚊など衛生害虫用のものは薬事法(厚労省)の規制対象ですが、アリ・ナメクジなどの不快害虫用のものや、シロアリ駆除剤などには規制がありません。このため、シロアリ駆除剤による健康被害は後を絶たないのが実情です。近年、シックハウス症候群・化学物質過敏症など化学物質による新たな健康被害が増加しています。乳がん・子宮がんなど各種がん疾患も増加傾向にあります。喘息・アトピー・花粉症などのアレルギー性疾患も増えており、今や国民の3 分の1 が症状を訴えています。さらに、自閉症などの発達障害も近年急増しています。これらの現代病の発症に、化学物質の関与が強く疑われています。しかし、科学的因果関係の解明は容易ではありません。かといって、何も対策を講じないでいると被害は増大するばかりで、取り返しのつかない状態となりかねません。最大の被害者は物言えぬ野生生物と次世代の子どもたちです。これ以上、対策の先送りは許されません。

 

  多種多様な化学物質を使いこなすには、共通の理念・戦略の下に、関係省庁が相互に連携し合い総合的に対策をすすめることが不可欠です。既にEU では、約8 年をかけて従来の制度を抜本的に見直して、製造・輸入量1 トン以上の化学物質の登録を義務づけるとともに、発がん性物質など特に懸念される化学物質については許可制を導入するという画期的な新法「化学物質の登録・審査・認可に関する法律」(REACH)を2006 年に制定しています。わが国でも、早急に同様の取り組みを開始する必要があります。今、消費者行政一元化が進められていますが、消費者・生活者の製品安全や食品安全を確保するためにも、化学物質管理制度の一元化が急務です。

 

  私たちは、これまで、「化学物質汚染のない地球を求める東京宣言」署名(2005)、「化学物質管理のあり方に関する市民からの提案」(2007)を提出するなどして政府の取り組みの強化を求めてきました。しかし、遺憾ながら、迅速かつ抜本的な対応はうかがわれません。そこで、私たちは、予防原則、代替原則、子ども・生態系への配慮などの基本理念を定め、新規・既存化学物質の登録、高懸念化学物質への厳重な規制、有害廃棄物への回収義務などの基本施策を定めるとともに、一元的組織の設置を定める「化学物質政策基本法」(仮称)を制定するよう要請します。